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自閉症関連の療育方法には、今回ご紹介する対人関係発達指導法Relationship Development Intervention(RDI) (1996年)の他に、ABA(1963年),TEACCH(1970年), PECS(2006年),ESDM(2010年)などが有名で、特に低機能自閉症(重度~中等度)で重宝されております。現在アメリカで行われている一番新しい療育方法であるESDMは約6年前から実施され、そろそろ、予後判定の報告が増えてきているようです。4歳までの超早期に介入する事で大幅な予後改善を目指しています。もちろん、日本語訳本はないので、地方では、おのおのの当事者家族が翻訳に挑戦して自宅で実施している状況です。
こういった療育方法は、それまでの療育方法の良い所を踏襲して作られています。ESDMの日本語翻訳本はそろそろ出てくるかもしれません。
TEACCHやPECS, ABAの焦点は、自閉症の認知障害の克服にあり、言わば自閉症の特異な体験世界に沿って、いかに自閉症患者に分かりやすく、状況の理解と彼らに求められる行動を提示するのかという、適応的な行動にその中心をおいています。(つまり自閉症児側に健常者が合わせていくプログラム)
しかし、自閉症の中心は社会性の障害ですし、その克服のためには、自閉症の認知障害を克服しなくてはなりませんが、その自閉症の認知障害を十分に考慮し、その認知障害によってもたらされた社会性の障害のレベルを見きわめ、社会性そのものを治療の対象としたプログラムは、これまでつくられてきませんでした。(つまり健常者側に引っ張ってくるプログラム)
今回お話するRDIは、そんな、自閉症の中核症状である、社会性の障害の治療を直接行おうとした、最初の画期的プログラムです。
対人関係発達指導法(RDI)
RDIは、アメリカ、ヒューストンにあるConnections CenterでSteven Gutstein博士によって1996年頃に開発されたプログラムです。
自閉症スペクトラム障害の中核となる障害の改善に焦点を当ててデザインされました。
その中核症状とは、知能ではなく、感覚過敏ではなく、言葉の遅れではなく、不安ではなく、dynamicな知性であると述べられております。
dynamicな知性とは、答えようのない問題や、白か黒かではないグレーな考え方、瞬時に変化していく情報などが含まれ、それを育むには、以下の発達経過が必要と述べられています。
- 同調
- 協調
- 即興と共同創造
- 外部世界の共有
- 内面世界の共有
- 他者と自己のつながり
RDIでは、御両親にどうやってお子様がDynamicな知性を使い、学ぶ機会をつくればよいのかについて、学んでいきます。この方法に則った療育は、現在和歌山市では、さくらクリニックが取り入れています。一方、TEACCHやABAなどを取り入れた療育は、愛徳整肢園や、他の療育園などで行われているようです。
著者の印象では、より重度の自閉症には、TEACCH, ABA, PECS, ESDMなどが適しており、軽度の言葉がしゃべれる自閉症には、RDIが適しているように思います。
当院に来院される発達障害を主訴とされる子供達は、いままで特に異常を指摘されず、小学校に入学し、入学後問題が前面に出てくる方が多く、その中に、軽度の自閉症が合併しているという事は良くあります。そんな方の自閉症の程度について簡単に評価する方法がありませんでした。
自閉症の重症度は知能検査で決めると思っている方も多いようですが、知能低下自体は自閉症の合併症であり、中核症状ではありませんので、厳密に言いますと知能検査と自閉性の重症度は1対1対応しません。
2015年9月に、アメリカから10年遅れて、自閉症の重症度を判定する方法(ADOS2日本語版)がようやく発売されました。おそらく2016年4月の保険改定から保険適応が降りるとおもわれ、ようやく普及してくると思われますが、それでも、その判定には、1人あたり1時間以上の時間が必要で簡単にその程度を見極めるというわけにはいきません。
そんな中、このRDIプログラムに記載されているRDA(Relationship Development Assessment:対人関係発達調査)を日常診療における、自閉症のレベル決定に重宝するのではと考えたわけですが、この発達段階が日本人の発達と同じなのかが、少し疑問に残り、念の為、知り合いの保育所の園長先生に質問してみたところ、一度全保育師さんに聞いてみては?と勧められ、今回、このRDAに記載されている各発達段階が、当該保育園の園児達の何歳にそれぞれ相当するか、聴取してきました。
次回につづく
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