各種渡航ワクチンの予約受付中。輸入ワクチンあります。

いわゆる成長痛とムズムズ脚症候群

  • URLをコピーしました!
目次

成長痛ってなんだろう

成長痛という呼称は英語では growing painsであり、1823年にフランスで最初に記載されたといわれています。その後 growing painsの存在は広く認められ、いくつかの医学的検討がなされてきましたが、その病因や診断基準、治療方法などについては確立されたものはみられていません。

 成長痛の成因として、生理的な骨成長に伴い、骨に痛みを伴うことはないのは明らかであり、従来から解剖学的要因や疲労性要因、精神的要因の3つの要因が考えられてきましたが、

  1. 足の形態と成長痛には関連がないとする報告がなされ、解剖学的要因は否定的となり、
  2. 疲労性要因については、身体的活動性が高い児に本症が多いことや、骨への過重負荷が要因と推定されたりしたそうですが、確定には至らず、
  3. 精神的要因については、患児は甘えん坊で他人に依存する性格で、親に過保護の傾向があり、母親の妊娠や転居など環境変化がきっかけとなるなどの特徴があるとの指摘があったものの、確証には至っていません。

 成長痛という呼称が不適切であると従来から多く指摘されているものの未だ、「いわゆる成長痛」として記載され、欧米の論文でも“growing pains”と括弧付きで記載されることが多いのが現状だそうです。

横井広道らが試作した診断基準

  1. 疼痛は8時間以上持続しない
  2. 来院時には無症状である
  3. 診察上圧痛,腫脹などの異常所見を認めない
  4. 単純X線検査で異常を認めない

4項目とも満たす場合に「いわゆる成長痛」と診断する

いわゆる成長痛(小児の一過性下肢痛)の診断基準作成の試み
横井広道ら、国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター小児整形外科
中国・四国整形外科学会雑誌 25(3): 495-495, 2013.

つまり、医学的に確立された成長痛という疾患は無いのです。(ただし、いちおうレセプト病名はあります。)

成長に伴って神経が引き伸ばされる場合、医学的には、脊髄係留症候群脊髄終糸症候群が相当しますが……

脊髄係留~終糸症候群

 学童期から思春期にかけて好発することから,かつては身長の伸びによって脊髄が牽引されることが原因と言われていたものですが、現在では動作時の脊髄の伸展によって脊髄内の微小循環障害が生じ,虚血性の脊髄障害をきたすという説が有力なのだそうです。
 上体を急に前屈したときや腰部に衝撃を受けたときなどに症状が悪化します。正常の終糸はependymal cell と glia cell からなり,それらのもつ弾性が脊髄を伸展から保護しますが、終糸に脂肪や結合組織が加わると弾性が失われ、張力を緩衝できなくなり、正常位置に脊髄円錐があっても症状を起こすようになると考えられています。

これらは、下肢の痛みもありますが、むしろ、排尿障害や、下肢筋力低下もきたしますし、前屈により症状の悪化を認めます。
こういう症状がないのに、夜間の下肢痛を認めるもので、高頻度にみかけるものとしては、ムズムズ脚症候群(Restless Legs Syndrome, RLS)があります。

 発達障害の診断が普及するにつれ、睡眠障害が注目されるようになり、この疾患の頻度が意外に多い事が分かってきました。

ムズムズ脚症候群(Restless Legs Syndrome, RLS)

症状

 むずむず脚症候群という名称ですが、脚の不快感はムズムズするだけではなく、“誰かに触られている感じ”、“脚の上を芋虫が這っている”など、人によりさまざまな言葉で表現されるため、詳しい問診聴取が必要ですが、子供では痛みとして訴えることもあり、成長痛との鑑別が必要になります。

 異常感覚を言葉で表現できない子供では、マッサージをせがんだり、寝る前に泣き続けるなど、寝ぐずりの原因として異常感覚が推測できる場合があり、またベッドの柵や布団に足をこすりつける、夜になると足をパタパタさせるなど運動症状でのみ疑われる症例もあります。子供によっては、脚だけに限らず、腹部、頚部、上腕などに同様の異常感覚を訴える場合もあるようです。

 筆者の場合、以下の症状が低年齢(身長がどんどん伸びているわけでもない年齢4~6歳付近)で出現し、多動傾向がある場合に、特に疑います。

こどもの症状の表現のしかた

  1. 足が気持ち悪い
  2. 虫が這っているよう
  3. こそばゆい
  4. 熱い
  5. 足が痛い
  6. 誰かがさわっている
  7. もにゃもにゃする
  8. 棘が刺さっているみたい
  9. 血管の中でサイダーが弾けるような感じ

原因

そもそも、RLSの治療としてドパミン作動薬が著効することから、病態には、ドパミン神経機能異常が示峻されています。

 一方、鉄はドパミン合成系のtyrosine hydroxylaseやmonoamine oxidase、さらに、ドパミントランスポーターの補酵素である事が知られており、特にドパミン作動性ニューロンに多く合まれていて、剖検脳で黒質色素細胞における鉄とH-フェリチンが低下していたとの報告などが蓄積されてきている事から、脳内鉄の異常によるドパミン神経機能異常が基礎にあるという説が一定のコンセンサスを得ています。

 また、同じドーパミン神経系の異常からか、ADHDの方に合併が見られる事がしばしば経験されます。
 ADHDの4割にRLSが合併し、RLSの3割にADHDが合併すると言われています。

治療

基本的に、規則正しい、生活リズム~睡眠の指導を行い、脚をさする程度で眠ってくれるようなら、12歳くらいまでにはほとんど自然治癒していくため、経過観察します。小学校入学前は、ADHDの有無に注意します。

 不眠の原因となる場合は、血清フェリチン値が50ng/ml以下であれば、鉄剤投与を試みます。フェリチン値が上昇しても不変の場合は、できれば、睡眠時脳波(PSG)を記録し、確定診断してからドパミン作動薬やベンゾジアゼピン製剤(リボトリール)などを考慮します

小児四肢疼痛発作症

夜間に限らず、四肢の痛みを訴え、家族歴があり、加齢と共に改善するもので、遺伝性があるものとして、新しく発見されました。ムズムズ脚との鑑別疾患として、今後考慮される必要がありますね。

http://www.sankei.com/west/news/160526/wst1605260029-n1.html

※)原文
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0154827

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次