レジリエンス(resilience)は1990年代から注目されてきた新しい概念で、日本では1995年の阪神淡路大震災で見直され始めた概念です。そもそも『弾力性、跳ね返り』という意味の、心の”しなやかさ”を表す心理的要因を表します。具体的な定義は、研究者間で一定していませんが、共通するものとして、
- リスクにさらされる
- リスクにさらされたにも関わらず、好ましい適応と結果をもたらす。
という事が共通しています。
他国の子供たちは貧困、紛争、災害などの状況に常にさらされています。今のパレスチナの子供たちなどは、まさに、その最中であったかと思います。目の前で、友達や、親が、血だらけで首が吹き飛ぶ、腹がさける、手足が無くなる、などの地獄を見ているわけです。
かえって、我が国の子供においては、虐待、いじめ、家庭内暴力、離婚、深刻な病気、交通事故、親の自殺など、子供自身の力では回避できないストレスに遭遇する事があります。
パレスチナの子供達ほど、酷い状況にはない、ハワイにおける研究では、ストレスにさらされた子供達は、10代になって、精神的不健康を示す率は高いものの、1/3は、問題なく育つことが出来ているそうで、まさに、そういった子供は、レジリエンスを育まれた子供達だと考えられ、何が、子供の心にレジリエンスを育むのかといった研究がなされました。
Grotbergさんは、3歳~11歳の子供と家族を対象として14か国を調査し、レジリエンスの高い子供達に共通する要因を整理し、チェックリストを作成していますので、以下に示します。
I HAVE要因
他人から支えられている要因
- 家族の中または、周辺に1人以上信頼できる無償の愛をくれる人がいる。
- 危険な状況に陥る前に、自分の行動を制限してくれる人がいる。
- 正しい道を示してくれる人がいる。
- 自分で勉強して物事を進めていく(自立する)事を望んでいる(支援する)人がいる。
- 自分が病気の時、危険なとき、学びたい時に助けてくれる人がいる。
※その他)身近に良い役割モデルがいる、安定した家族か、コミュニティーを持っている。
I AM要因
子供個人の資質としての要因
- 多くの人に好かれやすい人間である。
- 他人に良い事をしたり、自分の考えを言う事に嬉しさを覚える人間である。
- 自尊心があり、他人を尊敬できる人間である。
- 自分自身の行動に責任を持ち、その結果を受け入れる人間である。
- 楽観的な人間である。
※その他)普段は穏やかで自然体な人間である。将来の計画を達成できる人間である。他人に共感でき、思いやりのある人物である。自信、楽観性、希望にあふれ、信頼できる人間である。
I CAN要因
個人が獲得している対人関係スキルや問題解決力の要因
- 自分の恐怖や、悩みについて他人に話す事が出来る。
(他人に自分の考えや気持ちを表現することが出来る。) - 直面している問題の解決方法を見つける事が出来る。
(物事を実行するための新しい考えや方法を見出す事ができる。) - 悪い事や危険な事であると感じた時、自分自信をコントロール出来る。
(自分の感情、欲求、行動を調節出来る。) - 行動すべきまたは、誰かと話すべきタイミングを見つけ出す事が出来る。
- 自分が必要な時に助けを求める事が出来る。
※その他)課題が完了するまで取り組む事が出来る。人生のユーモアを見出し、緊張を軽減するために使える。
こう見てみますと、特に当院で扱う事の多い、社会性の発達障害【高機能自閉症(旧病名Asperger障害)】はI CAN要因の問題を多く抱えており、これが、PTSDに陥りやすかったり、陥ってからの回復が悪い事と関係しているように思います。
レジリエンスを育む方法
米国心理学会は、レジリエンスを育む方法として以下を推奨しています。
- 関係性をつくること
(家族や友人や他人とのよい関係をつくることが重要である。) - 危機を克服できない問題だと捉えるのを避けること
- 変化を生活の一部として受け入れること
- 目標に向けて進むこと
(逃げたり、避けたりせずに行動する。) - 自己発見のための機会を探すこと
- 自分に対する肯定的な見方をもつこと
- 物事の考え方についての展望を持ち続けること
- 希望に満ちた見解をもつこと
- 自分をケアすることが重要と教えること
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