小児科 副院長 小山博史です。
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例年のごとく、寒くなると、ノロウイルスによる被害がよく報告されています。
2014年1月には、浜松で給食パンから集団感染したことで、ニュースになっていますが、この工場はかなり衛生管理の徹底された施設であったこともあり衝撃的です。
ノロウイルスの診断で、通常行うのは、症状からのみです。下痢と嘔吐の患者が発生しだした場合、その中に、学童以上の年齢層が多ければ、ノロと考え、乳児ばかりならロタを疑います。(アデノウイルスは症状からはわかりません。季節で予想します。)
保険で出来るノロウイルス検査は不正確
一般的に保険適応が認められている免疫学的ノロウイルス抗原検査は、3歳未満または、65歳以上が認められています。この検査の感度はメーカー発表で94%とされていますが、これは、検査を行うタイミングでかなり影響を受け、実質は80%程度の感度と考えられています。よって、10人中2人は、ノロウイルスなのに、ノロウイルスでないと判断されてしまいます。ノロウイルスの感染力は凄まじいため、1人でも存在すると、周りはたちまち集団感染してしまいます。
衛生管理はどうしたら良いの?
食品関連の職場で働いている方に、感染したら、どうやったら良いか、良く聞かれますが、小さい食品店経営者なら、厚労省のマニュアルを参考にしていただいたら良いと思います。
その中で、次亜塩素酸は脱色、金属腐食、手指刺激が強いので、塩素系では、クレベリンがお勧めです。脱色は少なく、手指刺激もほとんどなく、金属腐食性もありません。当院も2009年から院内で採用してます。ただ、空気殺菌目的のクレベリンゲルはお勧めしません。刺激臭で気分を悪くする方がおられたり、長期安全性に関しては、証明されていないと思っています。
次に、アルコール消毒は、ノロウイルスには効果がありませんが、アルコール系手指消毒剤でありながら、ノロ同等のネコカシリウイルスに実験で唯一効果が証明され、特許を取得しているのが、ウエルセプトです。ノロウイルスに効果がある可能性が高いです。
※要望があったので、ウエルセプトを当院受付で、希望者に販売いたします。
また、カーペットに吐かれた場合の消毒方法としては、千葉県長生保健所の考案した、ペットシートを使った方法が良いと思います。
その他、排便後、便器の蓋を閉めて流さないと、霧状となったウイルスをトイレに充満させてしまい、家族に空気感染させてしまう可能性については、当院でも注意するように指導しています。
大手食品会社はどうすれば良いのか
ノロウイルスは、たとえ、成人の無症状の人でも最大で1か月は排便中にウイルスをばらまきます。3か月未満児の場合は6カ月まで排出する事があります。
ただし、平均排泄期間は、小児、成人で2週間程度です。
1歳未満 | 1歳 | 2~3歳 | |
---|---|---|---|
有症状期間 | 6日 | 8日 | 5.5日 |
ウイルス排泄日数 (平均) |
9~47 (20) |
5~19 (16) |
8~18 (10) |
2週間を超える ウイルス排泄率 |
75% | 71.4% | 25% |
※コチラからの引用
先述したように、如何に手洗いを徹底しても、集団感染が引き起こされるのであれば、大手食品製造工程にかかわっている方が感染した場合、職場を一定期間変更する必要がありますが、厚労省マニュアルでは、感染者の復帰には、高感度PCR検査で安全を確かめてからを推奨しています。この検査は100%近い感度と特異度を持つ検査ですが、保険適応されていません。実際、いくらで実施できるか、和歌山市医師会に問い合わせてみました。
【高感度PCRノロウイルス抗原検査】
手数料込検査料金:13000円程度
所要日数:3~5日
だそうです。大手の会社の方は、集団感染事例を発生させると、報道により(報道されなくても、自主回収により)、かなりの損害金額が発生する可能性がありますので、この程度の検査費用なら、社費で考えてみるべきと思います。
利用方法として、クリニックで症状から『感染性胃腸炎、嘔吐下痢症、ノロウイルス』などと診断された職員が重要な製造ラインで勤務している場合は、2週間配置転換し、復帰前に便でPCR検査を会社からクリニックに依頼すれば良いかと思います。
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