A型肝炎
分布
中国、インド、東南アジア諸国、中東諸国、南アフリカ諸国、南米諸国、カリブ海諸国(いわゆる日本を含めた先進国以外の全世界)に分布しています。
最も多いのはアフリカ大陸ですが、その次に東南アジアが高く、その次がアメリカ大陸です。
感染様式
A型肝炎ウイルスにより、引き起こされる肝炎です。このウイルスは便から排出され、ウイルスで汚染された食べ物を食べることによって感染します。ウイルスを持っている料理人の手から食べ物についたり、自然にA型肝炎ウイルスが集まった食材(牡蠣etc)を生で食べたりして、感染します。日本で報告されている患者さんの数は少ないのですが、実際はもっと多いと推定されています。(最近は国内発生が増加してきています。)
約3割の事例で家族内に2次感染を来します。
汚染された水や氷、甲殻類、汚染された水で洗われた果物や野菜(サラダ)を生で食べないように注意する必要があります。A型肝炎ウイルスは85度で2分間加熱すると死滅します。
つまり、通常の食中毒を予防する方法で予防を心掛けます。そういった意味で、A型肝炎ワクチンは、渡航者においては、後述する腸チフスワクチンとセットで接種する事が勧められています。
症状
約1か月の潜伏期間の後に、発熱や倦怠感と黄疸(おうだん)があらわれて発症します。多くは数週間くらいの入院で後遺症もなく治ります。気がつかない程度に軽いこともありますが、劇症肝炎といって命にかかわることもあります。衛生状態が良くなったので、自然感染の機会が激減し、60歳代以下の日本人のほとんどは免疫を持っていません。そのため免疫をつけるにはワクチンが有効です。
重症になると…
細胆管炎性肝炎(さいたんかんえんせいかんえん)といって、治るのに半年くらいかかる場合もあります。まれですが、A型肝炎でも劇症肝炎になると、死亡することがあります。
予防は?
A型肝炎ワクチン(任意接種、不活化ワクチン)で予防します。60歳以下のほとんどの日本人はA型肝炎に対する免疫持っておりません。十分に加熱した食べ物からはうつりませんが、ウイルスがついた手で食べ物に触るとうつる可能性もあります。回転寿司店で料理人を介して集団感染した例もあります。
米国ではA型肝炎ワクチンは子どもの定期接種になっていて、1歳から全員が受けるのが基本です。日本でもかかる人はB型肝炎に比べれば少ないですが、それでもワクチンの必要性は高いとされ、定期接種にすることが必要です。中・低開発国ではA型肝炎は常に流行していますが、欧米豪州などでも流行することがあります。海外旅行や長期滞在時には子どもでも接種が強くすすめられます。
国産A型肝炎ワクチン(エイムゲン)
日本でもようやく、2013年3月から、子どもでもA型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)が認可されました。
接種対象
1歳以上
接種方法
2~4週間間隔で2回、筋肉内又は皮下に接種。更に初回接種後24週を経過した後に1回追加接種する。
有効期間
初回接種後1年間有効。
追加接種後6年。
それ以降は6年毎の接種が必要
外国産A型肝炎ワクチンとの互換性
なし
特徴
利点
国産ワクチンであり、日本医薬品医療機器総合機構の補償が使えます。
欠点
- 流通在庫が少ない。
- 発注してもなかなか納入されないため、予約の場合は、早めにお願いいたします。
- 接種回数が多い
2~4週間隔で、2回目を接種し、その後、6カ月~12か月後に3回目を接種します。- 抗体持続期間が短い
3回接種後、6年程度抗体価が持続します。それ以降、抗体を維持するためには、6年毎の接種が必要です。- 海外産A型肝炎ワクチンとの互換性がない
追加接種として、海外産A型肝炎ワクチンを接種した場合、抗体持続期間が良くわからなくなります。
主な副反応
局所の腫れ、接種翌日の発熱
輸入A型肝炎ワクチン
当院で扱っている輸入A型肝炎ワクチンは、Havrixという名前のGlaxoSmithKline社製のA型肝炎ワクチンです。
Havrix 1440 :成人用輸入A型肝炎ワクチン
【接種対象 】
19歳以上
ただし、0.5mlに減量すれば、小児に使用可能です。
Havrix Junior 720:小児用輸入A型肝炎ワクチン
【接種対象 】
1歳~19歳未満
接種方法
初回接種は1回だけ。筋肉内に接種。
更に初回接種後6か月~1年後に1回追加接種する。
有効期間
初回接種後1年間有効。
追加接種後20年。
それ以降は20年毎の接種が必要
外国産A型肝炎ワクチンとの互換性
あり
特徴
利点
- 接種回数が少ない
1回接種で1年間有効な抗体がつきます。 - 抗体持続期間が長い
1年後に2回目を接種すれば、20年間有効な抗体が維持できます。 - 他の外国製A型肝炎ワクチンと互換性があり、追加接種を現地で行っても20年の持続効果が期待できます。
欠点
輸入ワクチンのため、日本医薬品医療機器総合機構の補償が使えないため、輸入会社IMMCの補償を使用しますが、基本は自己責任での接種となります。
主な副反応
局所の腫れ、接種翌日の発熱