狂犬病(Rabie)
要点
まずは、お忙しい方のために要点だけ述べます。
- 狂犬病は致死率約100%の恐ろしい病気です。
- 途上国に1か月以上滞在して町を歩く人は接種すべきワクチンです。
- 通常国産ワクチンを3回接種しますが、6か月かかります。2回接種で渡航する方が多いですが、2回接種では抗体がすぐに消えてしまうため危険です。輸入ワクチンでは1か月で3回接種出来、抗体が長持ちします。
- 狂犬病といいますが、犬以外からも感染します。
- 狂犬病にかかっている可能性のある動物に注意しましょう
- 狂犬病の動物に噛まれたらすぐに、傷口を洗浄して消毒しましょう。
- 狂犬病らしい動物に噛まれたら、通常その国の行政が、その動物を捕獲して検査して狂犬病かどうか確認しますが、途上国では、ほったらかしです。
- ワクチン未接種者の治療は、免疫グロブリンの注射を出来るだけ早くしてからワクチンを接種します。
- しかし、途上国の90%では免疫グロブリンは使用してくれていません。
- 日本では免疫グロブリンの薬は認可されておらず、常備していませんので、ワクチン未接種者が、噛まれた後の処置を十分に行いたければ、帰国せず、アジアなどの場合は、シンガポールや台湾、ジャカルタなどで免疫グロブリンの初期治療を受けてから帰国するのが賢明です。
狂犬病とは
ラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルス (Rabies virus) を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、犬に限らずヒトを含めたすべての哺乳類が感染・発症します。
原因哺乳類としては、犬、猫などのペット類、コウモリ、アライグマ、キツネ、スカンクなどが多いですが、兎に角、ハムスターなど、家庭内飼育のペットを含めたすべての哺乳類によって感染します。アメリカでは猫の感染が犬の3.7倍もあります。狂犬病ウイルスを持った動物に、噛まれなくても、傷口や唇などの粘膜面をなめられるだけで感染します。
- インドのアーグラ城塞でリスに咬まれかけた映像
- 狂犬病を媒介する動物たち
- トルコの街で突然飼い犬(ピットブル)に襲われる子ども
(明らかに狂犬病を発症している動物は、口周囲がヨダレだらけで泡まみれ、ふらついて歩き、不安のため、凶暴性が増しています。しかし、発症前の動物からも感染しますので、注意が必要です。なお、犬と猫だけは、狂犬病発症後10日程度で死亡する事が分かっているため、おおよそ10~14日以上生存していれば、狂犬病に罹患していなかったと考える事はできます。)
狂犬病の症状や治療法については、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページに詳しく記載されています。とにかく発症してしまうとほぼ100%死亡してしまいますし、上図のごとく、ほとんどの国で発症が認められており、毎年3万5000~5万人の人がこの病気で死んでいると言うんですから、渡航者にとっては、もっとも注意すべき疾患であります。
東南アジアでは、普通に野犬が道端にゴロゴロいますし、実際死亡者のほとんどは東南アジアが占めています。
死亡者数第一位はインドで、2位のパキスタン、3位の中国と比べ、10倍の死亡者数と抜きんでています。
H18年11月22日、横浜60歳男性が2か月前のフィリピン滞在中の犬に手を咬まれたために発症し死亡するという事例がありました。
狂犬病に罹患しやすい状況
- 動物にかまれて血が出る。
- 血が出ている傷口を動物に舐められる。
- 動物に自分の口を舐められて、唾液が口の中に入った。
- 眠っていて、気が付いたら近くにコウモリが居た。
- 動物にかまれた他人の傷を舐めた。
症状
潜伏期間は咬傷の部位によって大きく異なる。咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは神経系を介して脳神経組織に到達し発病するがその感染の速さは日に数ミリから数十ミリと言われている。したがって顔を噛まれるよりも足先を噛まれる方が咬傷後の処置の日数を稼ぐことが可能となる。脳組織に近い傷ほど潜伏期間は短く、2週間程度。遠位部では数か月以上、2年という記録もあるが、過去の最長記録は7年である。
潜伏期
潜伏期は咬傷を受けた部位、咬傷の程度、衣服の上からか素肌を咬まれたか、ただちに傷を洗浄したかどうか、その他の要因によって左右され、15 日程度~1年以上とばらつきが大きい。
患者の約60%では潜伏期が1~3ヵ月であり、1年以上の潜伏期が6~8%の患者で記録され、最長例は7年前にラオスで受けたイヌ咬傷が原因で発病した米国への移民少女である。
前駆期
風邪に似た症状(発熱や食欲不振などの非特異的症状)のほか、咬傷部位にかゆみ(掻痒感)、熱感などがみられる。知覚過敏や疼痛は神経走行を逆行性に広がり、咬傷受けた上下肢の痙攣も起こってくる。
前駆期は2~10日間続く
急性期
- 不安感
- 恐水症状
(水などの液体の嚥下によって嚥下筋が痙攣し、強い痛みを感じるため、水を極端に恐れるようになる症状) - 恐風症
(風の動きに過敏に反応し避けるような仕草を示す症状) - 興奮性
- 麻痺
(他の症状を認めず、麻痺のみ認める患者が20%ほど存在し、その場合はポリオと誤診されやすい。) - 精神錯乱
- 腱反射、瞳孔反射の亢進
(日光に過敏に反応するため、これを避けるようになる)
末期
2日から7日後には脳神経や全身の筋肉が麻痺を起こし、昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡する。
なお、典型的な恐水症状や脳炎症状がなく、最初から麻痺状態に移行する場合もある。その場合、ウイルス性脳炎やギラン・バレー症候群などの神経疾患との鑑別に苦慮するなど診断が困難を極める。
恐水症状は、喉が渇いていても水に恐怖を感じてしまう為、苦しむ動物や人間は多い。
狂犬病が疑わしい動物に噛まれてしまったら?(暴露後処置)
動物に咬まれる件数は、日本においては、年間6000件程度ですが、
一方、中国の場合、例えば、広州市だけで年間80000件だそうです。
事前のワクチン接種せずに、現地で咬まれて帰ってきた方の多くが、『手を咬まれてちょっと、流血したくらいで、大丈夫だろう、大げさな』と思って、帰国してきて、その後に詳細を知ってから、
- 何かほかにするべきことは?とか、
- 大丈夫でしょうか?とか、
- これは狂犬病の症状ではないでしょうか?とか、
聞いてきますが、発症したら99%死亡しますし、早期発見してもあまり意味がありませんので、助かるために帰国後悩んでも無意味です。
咬まれたときに傷口の消毒とワクチン暴露後接種だけでなく、現地でどこまで真剣にお金と時間をかけて免疫グロブリン接種にこだわるか以外で、他にすることがありません。
帰国してきたのなら、クヨクヨせず、『私は発症しない』と開き直って生活してください。
傷跡の処置
まずは、傷口を石鹸と流水でよく洗い、イソジンンや、塩化ベンザルコニウムなどの消毒薬で、処置します。狂犬病ウイルスは非常に弱いウイルスであるため、この処置によって、感染性を大幅に減少できます。もし、この処置を怠ると、以下に示す免疫グロブリンや、ワクチンによる処置の効果が大幅に低下してしまします。
咬まれた状況の観察
ワクチンと免疫グロブリンの投与が必要かどうかは、以前に狂犬病ワクチンの接種を受けたことがあるかどうかと、かんだ動物の種類と状態に応じて判断されます。たとえば、アメリカ国内では、次のような点が検討されます。
- かんだ動物はアライグマか、キツネか、スカンクか、コウモリか、野生動物か?
- かんだ動物は病気のように見えたか(ふらついていたか?唾液だらだらか?)
- かんだ動物は、挑発していないのに攻撃してきたか?
- 人が近づいても逃げようとしなかったか?
- かんだ動物の経過観察は可能か(10日以上生きているか観察できるか?)
これらの条件が多ければ多いほど、その動物が狂犬病である可能性が高く、できる限りWHO推奨治療をしておくべき状況であるということになります。
※途上国では、犬、猫なども危険が高いですが、アメリカでのペットの狂犬病罹患率は低いです。
医療処置
次に重要なのは、狂犬病ワクチン接種者と未接種者での、噛まれてしまった場合の対処方法の違いについてです。
詳しくは狂犬病暴露後の項を参照ください。ざっくり言うと…
アメリカCDCとWHOでは、ワクチン未接種者に対しては、狂犬病発症動物に深く咬まれたり、口などの粘膜や、傷口を舐められた場合、RIGとワクチンの併用療法が推奨されています。
問題は、ワクチン未接種者が狂犬病が疑われる動物に咬まれた場合、狂犬病免疫グロブリン(RIG)を投与すべきであるというところにあります。
狂犬病免疫グロブリン(RIG)の問題点
- 2mlあたり300ドルで、6本投与されます。
- 当該国内にない場合は、隣国に移送して投与されることになり、移動料金が莫大になります。(この費用はカード会社などの保険では適応されません。専用の海外旅行保険に入っておく必要があります。)
(実際インドネシアからシンガポールに移送されて処置された例が多数あります。)
- 人や、馬などの血液を採取して、そこから抗体を分離した血液製剤であり、大量生産に向かないため、そもそもが品薄です。
- 当該国内にない場合は、隣国に移送して投与される事になります。
(実際実際、インドネシアのジャカルタで狂犬病が流行したとき、国内にないため、シンガポールやタイに飛行機で移送されて、狂犬病免疫グロブリン(RIG)を投与されたという例が複数あります。また、中国の天津ではRIGが無いため、必要なら台湾に飛行機で移送する予定になっているそうです。)
しかし、移送してくれる病院はまだましです。RIGなしで、ワクチンだけという場合も多々あります。(現地病院の処置に不安がある場合は、大使館に相談しましょう)
途上国で供給されるRIGは、(先進国ではヒト血清由来の製品が入手できるのと対照的に)ウマ血清由来であることも多く、ウマ由来のRIGの投与は、血清病の重大なリスクとなります。
※日本国内では狂犬病免疫グロブリン製剤(RIG)は承認されていないので、入手はまず不可能なため、狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。まちがっても、日本で治療してもらおうと思わないでください。
途上国での狂犬病ワクチンの問題点
- 途上国で入手可能な狂犬病ワクチンはヤギ脳由来で不活化したセンプル型のワクチンや、乳のみマウス脳由来で不活化したフェンザリダ型のワクチンである事もあり、これらの動物脳由来ワクチンは、副反応が組織培養のワクチンより強く、効果も弱い。
- 温度管理が不適切で効果が減弱している
アメリカでも7割のクリニックは不適切 - ワクチンの期限切れ
アメリカでも3割のクリニックは期限切れ - 中国製ワクチンと書かれた無効な水である可能性
このような要らぬ心配事を無くすためにも、事前にワクチン接種しておく事をおすすめします。
予防1:狂犬病ワクチン
【東南アジアにおける最近の動物咬傷の頻度】
1ヶ月以上ハイリスク地域(で免疫グロブリンが手に入りにくい地域(※1))に滞在して街中を歩くような場合は、接種することをおすすめしています。その他、田舎,冒険旅行者,駐在者,布教活動者,そして狂犬病のリスクのある国に住む彼らの家族に対して,曝露前に狂犬病ワクチンを接種することが推奨されています。
※1)シンガポールやタイ、台湾以外
当院の狂犬病ワクチンは、国産と輸入の2種類を採用しています。
両者には、以下のような違いがあります。
組織培養不活化狂犬病ワクチン(国産)

PCEC(Purified Chick Embryo Cell) Rabies vaccine
(ニワトリ杯細胞精製ワクチン)
製造会社:一般財団法人 化学及血清療法研究所
- 医薬品医療機器総合機構の補償制度が使える
- 狂犬病暴露後接種の場合は保険適応で接種できる。(ただし、外国産ワクチンとの互換性はありませんし、接種回数は外国産より多く必要なため、外国で治療を受けて、その延長として、このワクチンを使用しても効果は不明となります。)
- メーカー保管品のため、接種希望しても、在庫不足で接種できない場合があったり。
- 納入まで数日~1週間必要。
- 免疫取得まで6か月もかかる。
- 免疫効果が弱く、2回接種では、6か月で60%の人は抗体が消失してしまう。
- あと数年でこのワクチンは生産中止し、Rabipurに置き換わる予定です。
- 外国製ワクチンとの互換性がないため、このワクチン以外の狂犬病ワクチンと組み合わせて接種することが出来ない。
初期免疫のための接種回数 | 3回 |
接種方法 | 初回(0日)、初回から4週後、初回から6~12か月後 |
接種部位 | 上腕の皮下注射 |
接種容量 | 1ml/回 |
抗体維持期間 | ![]() 3回接種後1-1.5年 ※2回接種では、いったん免疫が得られても、6か月で、60%の人は抗体価が消失してしまいます。 抗体を維持するためには、1-2年毎に追加接種しつづける必要があります。 ProductionandQuality Control of Rabies Vaccine.Akira Yamada et al, The Chemo-Sero-Therapeutic Research Institute, Kumamoto 860, Japan, p83-90 |
- 妊娠の可能性があり、かつ狂犬病にかかるリスクが高いわけではない(単なる旅行者やビジネスマンなど)方
- ゼラチンアレルギーのある方や、重症の卵アレルギーや、鶏肉アレルギーのある方
- カナマイシン、エリスロマイシンに対するアレルギーのある方
- 明らかな発熱を呈している方
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな方
よく認められる | 接種部位の紅斑、痛み、腫脹 |
稀に認められる | 頭痛、めまい、吐き気、腹痛、筋肉痛 |
※軽微な副反応ばかりです。ただし、他のワクチン同様、ギランバレー症候群などの自己免疫疾患が接種後に発症することも極まれにありえます。
重篤な副作用が発生した場合、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく給付を受けることができます。
VERORAB(輸入未認可)

Purified inactivated rabies vaccine, prepared on VERO cells.
製造会社:Sanofi Pasteur SA(フランス)
なぜわざわざ輸入品を採用したかと言うと…
- 免疫完了まで6か月もかかるような国産ワクチンでは、実質接種できる方がいない。(出発まで3か月未満の方が多い)
- 首都圏では主に輸入品を使用する方が多い
- 狂犬病が致死的疾患で日本のように駆逐されている国の方が珍しい
- 現在の国産品は効果が弱く、輸入品の方が免疫効果が高い(そもそも国産ワクチンを生産している化血研がそれを認め、数年後にRabipurに変更する予定である。)
という事を鑑みますと、発症したら100%死亡するような狂犬病に対して、そんな弱い、不安になるような国産ワクチンを勧めるわけにも行かず、日本にRabipurが正式導入されるまで、個人輸入せざるを得ないと考えました。
- 院内在庫のため即接種開始可能
- 免疫効果が高い(verorabは現在存在するワクチンの中で最高性能です。)
- 免疫取得まで4週間と最短
- 他の外国製ワクチンと互換性があるため、他の狂犬病ワクチンと組み合わせて接種できる。(狂犬病暴露後接種を途中まで海外で行われた後の続きの接種が出来る。)
- 補償制度は、輸入業者の制度を利用するが、実質無いに等しい
- 輸入手数料の分高価となる。
- 狂犬病暴露後接種の場合でも保険適応はない。
初期免疫のための接種回数 | 3回 |
接種方法 | 初回(0日)、初回から1週後、初回から3週~4週後 |
接種部位 | 上腕または、大腿部の筋肉注射 |
接種容量 | 1ml/回 |
抗体維持期間 | 3回接種後1-2年 ※1年後に追加接種すれば、その後5年は有効です。 (※低リスクの旅行プランの場合は、追加接種は不要です。ただし、 暴露リスクの非常に高い方【洞窟探検家や、動物間で狂犬病が流行 している地域の獣医とその同僚などの】は、2年毎に血中抗体価検査を実施した上で1回接種する事が推奨されています。) |
※ニワトリ胚細胞精製ワクチン(PCEC)(Rabipure etc)などと互換性があるため、途中から当ワクチンに変更できます。
- 生後6か月未満の方
- 妊娠の可能性があり、かつ狂犬病にかかるリスクが高いわけではない(単なる旅行者やビジネスマンなど)方
- ネオマイシン、ストレプトマイシン、ポリミキシンBに対するアレルギーのある方
- 明らかな発熱を呈している方
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな方
- 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな方
- 補償のない未認可ワクチンであることを了承できない方
よく認められる | 接種部位の紅斑、痛み、腫脹 |
稀に認められる | 頭痛、めまい、吐き気、腹痛、筋肉痛 |
※軽微な副反応ばかりです。ただし、他のワクチン同様、ギランバレー症候群などの自己免疫疾患が接種後に発症することも極まれにありえます。
重篤な副作用が発生した場合、生馬医院が個人輸入したワクチンの場合は輸入業者の補償制度を使用します。
ただし、輸入業者が提供する補償制度は、民事裁判で医師の責任が0でワクチンが100で、全てワクチンの責任で医師は全く責任が無いという判決の時しか補償されませんので、現実的には使えない可能性があります。 そのため、破傷風などの国産ワクチンと同時接種することにより、副作用が出た場合の補償を国産ワクチンの物を使える事を期待して行うという方法もあります。 (実際、出発まで時間がない方は同時接種するしかありません) しかし国産ワクチンと未認可輸入ワクチンを同時に接種した場合に国が補償してくれるかどうかの確証はありませんし、他のワクチンと同時接種してしまうと、輸入業者のワクチン補償は受けられなくなります。 以上の理由から、どのような接種方法をおこなうにせよ、自己責任での接種をお願いいたします。 |
予防2:狂犬病の動物に咬まれないために
咬まれる可能性のある動物から逃げる
- 人が近づいても、凶暴にも臆病にもならず、怖がっているようにも見えない。
- 夜行性の動物(コウモリ、スカンク、アライグマ、キツネなど)が日中に姿を現す。
- コウモリが奇妙な音を発し、うまく飛べていない。
- 挑発していないのに、かみついてくる。
- 脱力している、あるいは興奮して狂暴である。
- ピットブルなどには近づかない(目を合わせない)
- 逃げる時は、ゆっくり、横目で観察しながら離れる。(突然背を向けて逃げると追いかけてくる習性があります。)
※米国では、ウサギや大半の小型齧歯類(ハムスター、アレチネズミ、リス、ラット、マウスなど)にかまれても、狂犬病の予防接種はほぼ必要ありません。米国では、狂犬病による死亡例のほとんどは、コウモリが原因です。
米国での吸血コウモリによる咬傷(かまれた傷)は気づかれないまま放置されることが多くコウモリがいる洞窟や、接触が疑われる場合(たとえば、目が覚めたら部屋の中にコウモリがいた場合)は、暴露後処置を推奨されています。
狂犬病ワクチン無効の狂犬病とは?
狂犬病ウイルスの仲間である、ラブドウイルス科リッサウイルス属には、以下の7つの種類がわかっています。
- Genotype 1(狂犬病ウイルス:Rabies virus)
- Genotype 2(ラゴスコウモリウイルス:Lagos bat virus)
- Genotype 3(モコラウイルス:Mokola virus)
- Genotype 4(ドゥベンヘイジウイルス:Duvenhage virus)
- Genotype 5(ヨーロッパコウモリリッサウイルス1:European bat lyssavirus type 1; EBL1)
- Genotype 6(ヨーロッパコウモリリッサウイルス2:European bat lyssavirus type 2; EBL2)
- Genotype 7(オーストラリアコウモリリッサウイルス:Australian bat lyssavirus; ABL)
このうち、2)のラゴスコウモリウイルス以外は、ヒトにおいて、狂犬病と同様の症状を引き起こす事が知られています。
狂犬病ワクチンは、このうち、1)と7)には、完全な予防効果が見られ、2)、4)、5)、6)には部分的な交叉反応によるある程度の予防効果が見られていますが、3)モコラウイルスには、予防効果が無いと言われています。
- ナイジェリアでのトガリネズミなどから感染するモコラウイルスには、無効
- オーストラリア大陸以外の(ヨーロッパ大陸の)コウモリ狂犬病への効果はやや劣る(無効ではない)。
外部リンク
- 狂犬病10の事実(厚労省)
- 国産狂犬病ワクチンの不安
- 狂犬病の恐怖
- 最後の悲劇。~インドネシア日記第14話~
- バニラで行く年末台湾2013(18)-成田空港健康相談室 (2)
- ミルウォーキー・プロトコル
- 狂犬病からの生還
- 致死率100%の感染症「狂犬病」旅先で野良犬に噛まれて(タイ)
- ホーチミンでは1日90人が暴露後接種を受けているが、それでも必要な人の60%にすぎない。2015/8/4
- バリ島における狂犬病ワクチン不足
- バリ島の恐怖。観光名所でも犬に追い回され咬まれ狂犬病暴露後免疫(台湾人観光客)
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