破傷風
破傷風は世界中どこでも感染する可能性があり、嫌気性菌であるClostridium tetaniが産生する神経毒素によって症状が出現します。
世界中の土壌や汚泥に芽胞として存在しており、熱と乾燥に強い菌です。
感染様式
感染経路は破傷風菌に汚染された物質との接触による経皮感染がほとんどです。錆びた釘による傷からの感染や動物に咬まれた傷からの感染が有名ではありますが、錆びていない釘からの感染や、ガーデニングの際の軽度のひっかき傷からの感染もあります。
破傷風菌が存在する場所は
- 汚い場所
- 埃っぽい場所
- 土壌
です。
また、歯槽膿漏からの感染や薬物乱用者による経静脈感染も存在します。
破傷風は破傷風菌の毒素に対する十分な免疫力がない者に発症し、ヒトからヒトへの感染はありません。
また、破傷風は自然感染によって免疫を獲得することはなく、予防接種を受けた人のみが、免疫を獲得します。
一般的に、ワクチン接種等により0.01IU/mlの抗体を保有していれば発症の危険はないとされています。
症状
潜伏期間は3~21日間で平均10日間ですが、受傷部位の場所や性状により1日から数か月間の幅があり、一般的に感染から発症までの期間が短いほど重篤な予後となります。
症状は下顎や頚部の筋肉の硬直や有痛性痙縮で始まることが多く、重症例は呼吸不全を呈し死亡します。
臨床像として全身性、局所性の2つに大別されますが全身性が80%以上を占めます。
全身性破傷風の臨床経過は様々で、破傷風菌から産生される毒素への患者の免疫力、破傷風菌から産生される毒素雛、患者の年齢および健康状態により異なります。
治療は破傷風免疫グロブリン、破傷風トキソイド、筋痙縮に対する薬剤、抗菌薬などを使用します。
東日本大震災後、10人の老人が破傷風を発症しました。
破傷風トキソイド
わが国では1952年に破傷風トキソイドが導入され、1968年にDPTワクチン(ジフテリア・百日せき・破傷風)の小児への定期接種が可能になりました。
DPTワクチンは1期初回(3回)、1期追加(1回)、2期(沈降DTトキソイド1回)の合計5回の接種が、定期接種として予防接種法に定められています。本来ならば、その後も約10年ごとに破傷風トキソイドの追加接種が必要ですが、わが国においてはこの10年ごとの追加接種は積極的に行われておらず、現在でも年間100例前後の破傷風患者が報告されています。
つまり、1968年以前に出生した者は、通常はこれまでに基礎免疫に必要な回数の接種歴がない方がほとんどです。実際、2004年から2008年に報告された患者(546人)は94%(513人)が40歳以上であり、その年代における抗体保有率は著しく低い状態でした。
接種方法
文献によりさまざまな書かれ方がされています。通常、三種混合ワクチン4回など、基礎免疫をきっちりと接種された方の” 多く” は、最終接種から10年以上経過していても、1回追加接種するだけで抗体価が上がると言われていますが、40歳を超えますと、ワクチンに対する反応が鈍くなる傾向があります。
以下に示す基準は当院の基準です。
三種混合ワクチン(DTaP)を4回接種した人
最終接種から10年以内の方
最終接種から10年以上経っている方
【出生日が1970年以降】
【出生日が1969年以前】
- 渡航期間の1年程度抗体維持できれば良い人
- 10年程度抗体維持したい人
- 3~8週間隔で2回接種後、1年後に3回目を接種
過去の接種歴が不明の方
- 3回接種
- 接種方法 : 初回、3~8週間後、1年後
- 抗体持続期間(3回接種後):10年