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狂犬病暴露後

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狂犬病暴露後医療処置

WHO分類

カテゴリ 狂犬病が疑われる動物との接触 暴露後処置
I 触ったり、餌をあげたりした際に
正常な皮膚の上を舐められた。
不要
II 皮膚を軽くかじられた
小さな引っ掻きあるいは出血のないすり傷
緊急ワクチン接種
傷の手当
III 1か所以上の皮膚貫通した咬み傷やひっかき傷
損傷を受けた皮膚を舐められた
舐められてことで唾液と粘膜が接触した
コウモリとの接触
緊急ワクチン接種
狂犬病免疫グロブリン(RIG)投与
傷の手当

※これ以外に、タイの研究者の間では、category IVというのも想定されており、これは、顔面、頭部、腕や手指に重症の咬傷を多数箇所受け、体重あたりで算出したRIG投与量では液量が不足してすべての傷に注入できない場合が該当する。(生食でRIGを薄めて注入するらしい)

※10日間の観察で加害動物が健康であれば、または加害動物を安楽死させ適切な方法で検査して狂犬病陰性と判定されれば治療を中止する。(10日間という観察期間はイヌとネコにだけ適用できる。種の保存が脅かされている稀少動物を除いて、狂犬病が疑われるイヌ、ネコ以外の家畜や野生動物は捕獲して安楽死させ、適切な方法で狂犬病の検査を行う)

※げっ歯類、家ウサギ、野ウサギへの曝露があっても曝露後発病予防が必要になることは稀です。(通常、げっ歯類などの小動物は、狂犬病を持った犬や猫に咬まれるという事は、即死を意味しますので、狂犬病を発症している時間がありませんので、安全な事が多いです。ただ、吸血コウモリなどは、血をなめるだけですので、即死せず、げっ歯類が狂犬病を発症する場合があるため、絶対的なものではありません。現地医療機関の判断に不安がある場合は、大使館に相談しましょう。)

※コウモリと接触した場合、咬傷や引っ掻き傷、粘膜への曝露が除外できなければ曝露後接種を考慮すべきである。

狂犬病発生が少ない地域では、加害動物が外見上健康なイヌやネコであって、加害動物を経過観察できれば、動物に何らかの異常が見られるまで、曝露後発病予防開始を延期することもできる。

目次

狂犬病免疫グロブリン Rabies immuno groblin(RIG)

WHOでは暴露後、ワクチン接種前に可及的速やかにRIGの投与を創傷部位付近および筋肉内に行うことを推奨しています。(その場に免疫グロブリンが無い場合は、7日以内に免疫グロブリンを投与する。)
しかしながら、RIGは世界的に供給不足であり、90%以上の患者はRIGの投与なくワクチン治療を受けているのが現状です。日本でも、RIGは製造を行っていないため、入手は非常に困難です。

このため、狂犬病動物に咬まれた可能性がある場合は、必ず、現地の首都圏の大きな病院を受診して加療を受けてから帰国してください。(旅行保険などでお金に余裕のある方は、当事国に無い場合は、隣国に飛行搬送してもらって接種してもらう場合もよくあります。)
まちがっても、日本で治療してもらおうと思わないでください。日本には通常、RIG自体がありません!

また、上記カテゴリIIIに属しているにも関わらず、RIGの処置が受けられない場合は、大使館に相談してください

(途上国で供給されるRIGは、(先進国ではヒト血清由来の製品が入手できるのと対照的に)ウマ血清由来であることが多く、ウマ由来のRIGの投与は、血清病の重大なリスクとなります。)

暴露後緊急ワクチン接種

狂犬病抗体価が十分な方

  • 初回接種3回接種後または、追加接種後6カ月以内の方
  • 抗体検査で十分な抗体価がある方
    に対する治療法です。
    (RabipurやVerorabなどの外国製ワクチンでは、接種後1年、追加接種後は2年ほどは有効な免疫がある場合が多いですが、抗体検査をしない場合は万一を考えて、6カ月となっています。)

暴露後、0日と3日にワクチン接種するだけ。【狂犬病免疫グロブリン(RIG)の投与は不要です。】

狂犬病抗体価が不十分な方

★この場合は、狂犬病免疫グロブリン(RIG)の投与も推奨。★

  • ワクチン未接種の方
  • ワクチン不完全接種の方
  • 初回接種3回接種後または、追加接種後6カ月以上の方で抗体検査しない方
  • 抗体検査で不十分な方
    に対する治療方法です。
接種法 接種日 0 3 7 14 21 28 90
Essen法 筋肉注射 1 1 1 1 1 (1)
Zagreb法 筋肉注射 2 0 1 0 1 0 (1)
TRC-ID法 皮内注射 2 2 2 0 0 1 (1)
Oxford法 皮内注射 8 0 4 0 0 1 1
日本法 皮下注射 1 1 1 1 0 1 1

※Zagreb法:抗体価の上昇が速いため、RIGを接種出来ない場合にWHOは推奨
※TRC-ID法(タイ赤十字皮内方式):筋肉内投与量(1ml)の0.2mlを2か所に接種
※Oxford法:筋肉内投与量(1ml)の0.1mlを8カ所に接種。(RIGを接種出来ない場合に推奨)

アメリカ国内受傷における対応

ペットのイヌ、ネコまたはフェレットにかまれた場合

これらのペットが健康そうに見え、10日間以上観察できるのであれば、その動物に狂犬病の症状が現れない限り、ワクチンは必要ありません。その動物に狂犬病の可能性を示す何らかの症状が出現した場合は、直ちにワクチンを接種します。狂犬病の症状が現れた動物は安楽死させ、脳を検査して狂犬病ウイルスの有無を調べます。かんだ動物が10日を過ぎても健康であれば、かんだ時点で狂犬病はなかったと判断でき、ワクチンの接種は不要です。

かんだ動物が狂犬病を発症した場合や、発症したように見える場合は、かまれた人に直ちにワクチンを接種します。

かんだ動物が逃げてしまったなどして、健康状態を判定できない場合は、狂犬病を発症する可能性と予防接種の必要性について、公衆衛生当局の担当者に相談します。

スカンク、アライグマ、キツネ、その他ほとんどの肉食動物、またはコウモリにかまれた場合

米国では、これらの野生動物は、検査を行って陰性であると証明されない限り、狂犬病にかかっているとみなします。通常、これらの動物にかまれた人には直ちにワクチンが接種されます。野生動物の場合は、10日間の観察期間を置くことは推奨されません。

コウモリの咬傷は見過ごされることもあるため、かまれた可能性が疑われる場合にもワクチンを接種します。たとえば、目が覚めたら部屋の中にコウモリがいた場合は、ワクチンを接種します。

家畜、小型のげっ歯類、大型のげっ歯類(ウッドチャックやビーバーなど)、ウサギまたは野ウサギにかまれた場合

かんだ動物に応じた検討が必要なため、公衆衛生当局の担当者に相談します。ハムスター、モルモット、アレチネズミ、リス、シマリス、ラット、マウスなど小型のげっ歯類やウサギまたは野ウサギにかまれた場合、狂犬病ワクチンの接種が必要となることはまずありません。

当院で行った暴露後接種記録

30代女性

2014年2月、5週間のインド旅行にて、到着10日目、市場で立っていたら突然後ろから飼い犬に足を咬まれた。WHO3°。飼い主は、咬まれる奴が悪いというような態度で去って行った。
RIGは無く、現地医でEssen法にてヒト2倍体型ワクチン3回接種後に帰国。当院でRabipur追加接種続行

40代男性

2015年〇月、ラオスに仕事で渡航後、1日目で、子犬に近づいた所、大きな犬が突然出てきて手を噛みつかれた。WHO3°。RIGは無く、現地医で1日遅れて、Essen法にてVerorab2回接種後に帰国。当院で追加接種続行

2回目接種を行った現地クリニックでは、冷蔵保存すべきワクチンを常温の棚に置いており、そこで取り出された物をクリニックに持って行って接種するシステムだったようで、常温保存されたワクチンで、無効である可能性が高く、当院で1回多めに追加接種した。

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