三種混合ワクチン
三種混合ワクチンとは、ジフテリア、百日咳、破傷風の3つの病原菌に対するワクチンです。それぞれ、Diphtheria、Tetanus、Pertussis、の頭文字をとってDTPワクチン、DTPと呼ばれることも多い。
ジフテリア、破傷風に対するワクチン成分は毒素成分を不活化処理したトキソイドを利用しています。百日咳に対するワクチン成分は、副作用の少ない成分ワクチン(aP, acellular pertussis 非細胞性百日咳)であり、DTaPとも表現されます。
歴史
日本では1949年からジフテリアトキソイドの予防接種が行われ、1958年からは百日咳を加えた二種混合ワクチン (DP)、1964年からは一部自治体、1968年からは全国で、破傷風トキソイドを加えた三種混合ワクチン (DPT) が小児に定期接種として開始されました。
1975年、それまで使用されていた百日咳全細胞成分入りの三種混合ワクチンDTwPの百日咳成分による脳症などの重篤な副反応発生事故の問題により、一時中断され、その後、1981年に改良型のDTaPワクチンが開始されています。
その後、このタイプがスタンダードとなりました。
しかし、小児期の4回接種では小学校高学年あたりから、百日咳抗体が低下する事がわかり、近年、成人の軽度の百日咳(咳だけが2週間以上続く)が増加し、三種混合ワクチン接種前の子供に感染する危険がでてきました。
しかし、小児と同量のDTaPワクチンを成人に接種すると局所反応が強くでるため、接種出来ませんでした。これは、DTaPに含まれるジフテリア、百日咳抗原が多すぎるために起こる局所反応であったため、
フランス、イギリス等 先進国で、これらの抗原量を減量した成人用三種混合ワクチンTdapが開発され、使用されるようになり、アメリカにおいては、現在では、64歳以下は10年毎の接種が推奨されるに至りました。
成人用三種混合ワクチンTdap
もうすぐ、成人専用の三種混合ワクチン(Adacel:Sanofi Pasture)が日本の認可取得に向けて準備中とされていますが、今現在、日本では未承認です。当院ではこれまで、小児用三種混合ワクチンの少量投与を行っていましたが、小児用三種混合ワクチンの製造中止をもって、未認可輸入ワクチンBoostrixの使用に切り替えました。
特に、欧米への留学において必須ワクチンとなってきており、これを接種しないと、渡航できません。
採用ワクチン
当院では、イギリス グラクソ・スミスクライン社が製造するBoostrixを採用しています。
当院の輸入による、未認可ワクチンですので、日本医薬品医療機器総合機構の補償はありません。輸入会社IMMCの補償はありますが、基本は自己責任での接種となります。
なお、Adacelが認可されれば、そちらに切り替える予定です。
接種方法
初回接種
10歳以上
0.5ml×1回の筋肉内接種で破傷風抗体は10年間、百日咳抗体は5年間程度効果が期待できます。
追加接種
Boostrixの追加接種スケジュールは今のところアメリカでも検討されていません。(理論的には、10年以上経過すれば、抗体価が下がるので、接種可能とは思われますが。)
小児期に三種混合ワクチンを一度も接種したことがない場合、当ワクチンを1回接種しても百日咳抗体獲得に効果があるかどうかは検討されていません。(本ワクチンは、小児期に三種混合ワクチンを接種した方の成人期の追加接種として設計されたワクチンであるため。)そういう方の場合は、一度、血液検査で百日咳抗体価を確認し、抗体価の上昇を確認するべきです。
小児用三種混合ワクチン
※2014/12/4以降、本製品の製造が中止されたため、使用できなくなっており、新規の方は、国産四種混合ワクチンを使用します。
採用ワクチン
当院では痛みが少ないという理由から沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチンキット「タケダ」を採用しておりましたが、4種混合製剤移行措置による製造中止のあおりを受け、途中から沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチン「第一三共」シリンジに変更しておりました。所が、
※2014/12/4以降、本製品の製造中止のため、使用できなくなっており、新規の方は、国産新四種混合ワクチンを使用します。
接種方法
定期接種1期として接種する場合
生後3か月~90か月(約7歳半)未満までの間に
- 初回接種3回
- 3~8週間隔で接種します。
- 追加接種1回
- 初回接種終了後おおむね1年後に接種
成人の百日咳・破傷風抗体獲得用として接種する場合
- 0.2mlを1回接種(皮下注)
この接種方法は、柳澤 如樹等の報告(感染症誌 83:7~11,2009)に基づく接種方法です。
採用ワクチン
文献報告と同じ沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン「北里第一三共」を採用しておりましたが、上述のごとく、製造中止となったため、現在は輸入ワクチン(Boostrix)に切り替えております。
- 破傷風抗体について
- 小児期に三種混合ワクチン既往者において、40歳未満または、最終接種から10年未満の場合、1回接種で10年有効です。
- 小児期に三種混合ワクチン未接種者または、40歳以上で最終接種から10年以上経過の場合は、破傷風単独ワクチンの初回接種を先に行ってください。
- 百日咳抗体について
- 60歳未満の場合、1回接種で5~10年有効です。(詳細な検討はされていません。アメリカのTdapの検討では5年程度であったという報告に基づいています。)
- 60歳以上の場合、効果についての報告がありません。
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