昨年度の(2013年10月~2014年5月)インフルエンザシーズンにおいて、当院でFlumist Quadrivarentを接種した方の効果について、追跡調査をしましたので、発表いたします。
総接種者数は57人で、うち、2歳の1人が連絡とれず、56名での集計結果となっております。
昨シーズンのインフルエンザの特徴
A型について
たいした亜型も出る事なく、通常の注射インフルエンザワクチンに含まれている株と同じ型のインフルエンザが流行しました。前半はH1N12009pdmが流行し、4月以降に香港型が小流行しました。
よって、フルミストのみならず、通常のインフルエンザワクチンもそこそこ効いた方だとおもっておいてください。
つまり、両ワクチンの当たり年だった。
B型について
これもまた、山形株がメインで流行した模様ですが、和歌山県ではビクトリアも流行した模様で、これに関しては、両方に効果のあったフルミストが有利と考えらえる状況でした。また、B型が増えてきたのは、3月頃でしたので、効果期間の長いフルミストが断然有利となる状況でもあります。
フルミスト結果発表
総人数が少ないので、この結果をもって全てを語るわけにはいかないでしょうが、かなり良く効いています。
特に、B型に関しては圧倒的有利といった感じです。
概況
年齢グループ | 総罹患者 | A型罹患者 | B型罹患者 | 総接種者 | A型非罹患率 | B型非罹患率 |
---|---|---|---|---|---|---|
~2~7歳 | 4 | 4 | 0 | 36 | 89% | 100% |
~8~13歳 | 1 | 0 | 1 | 12 | 100% | 92% |
~小児全体(15歳未満) | 5 | 4 | 1 | 49 | 92% | 98% |
~成人 | 2 | 2 | 0 | 8 | 75% | 100% |
~Total | 7 | 6 | 1 | 56 | 89% | 98% |
※2歳1人と3歳1人はフルミスト2回接種です。
※12歳の2名と3歳1人は、フルミスト+注射ワクチン併用です。
※型不明の2人は、1人は罹患時期が早期で教室での流行からおそらくA型、もう一人の成人は、同時期に子供がA型であったため、A型として集計しています。
- 通常の注射型ワクチンでは、7歳未満での効果は、A型に関しては30%、フルミストは83%と報告されていますが、当院での今シーズンは89%の効果でした。
- 成人では注射型の方が若干効くのかと思っていましたが、A型で75%という数字は、注射型ワクチンとほぼ同じです。
- 全年齢を通して、B型に関する効果がかなり高いのは、やはり、効果が長持ちするからだろうと推測できます。
罹患者における集計
接種時期は罹患とは無関係であった。
やはりフルミストの効果は1シーズン丸々続くようです。
早く接種しても、まったく効果に違いがみられていません。
小児
接種月 | 罹患者数 | 未罹患者数 | 非罹患率 |
---|---|---|---|
9月 | 2 | 12 | 86% |
10月 | 0 | 14 | 100% |
11月 | 3 | 17 | 85% |
Pearson’s Chi-squared testでp-value = 0.3162
有意水準5%、検出力92.7%
成人
接種月 | 罹患者数 | 未罹患者数 | 非罹患率 |
---|---|---|---|
9月 | 0 | 3 | 100% |
10月 | 0 | 2 | 100% |
11月 | 2 | 3 | 60% |
鼻水があったり、うまく吸えずに垂れると効果が落ちる可能性あり
小児例における分析ですが、鼻炎があったり、うまく吸いこめなかった人は、効果が落ちる傾向が疑われます。
接種時エピソード | 罹患者 | 未罹患者 | 非罹患率 |
---|---|---|---|
鼻炎あり | 1 | 1 | 50% |
垂れた | 1 | 0 | 0% |
なし | 3 | 43 | 93% |
※鼻炎ありで未罹患者1人は2回接種者です。
副反応
ワクチンによる副反応かどうかは不明ながら、報告があった分を記載します。電話調査でもこれ以外の症状の訴えはありませんでした。
年齢 | 副反応 |
---|---|
2歳 | 4日後に38℃, 5日後に37.7℃の発熱 しかし鼻汁なし |
2歳 | 1日後に39℃の発熱2日 鼻汁は軽度 |
3歳 | 2日後に38℃の発熱1日のみ |
3歳 | 4日後に蕁麻疹と膿性鼻汁 もともと蓄膿歴があり、予想範囲内。投薬で改善させた。 |
発熱は、3歳以下のみ認められました。
症状別まとめ
副反応 | 人数 | 発生率 |
---|---|---|
発熱(全体 で) | 3 | 5.4% |
発熱(3歳以下で) | 3 | 15% |
鼻炎 | 10 | 17.9% |
電話聞き取り調査では、
- 鼻炎症状は、一般的な報告よりかなり少なかったです。
- 発熱は、ほぼ一般的な報告通りの頻度でした。
鼻炎持続期間 | |
1~2日 | 4人 |
3~4日 | 4人 |
7日 | 2人 |
※なお、鼻炎または、発熱を認めた例全例(13人)は、今季インフルエンザには罹患しませんでした。
まとめ
- 評判どおり、良く効く
- 接種時に鼻炎があると効果が落ちる可能性がある。
- 接種時期と罹患率に差がない。
- 成人も結構効く
- B型に良く効く印象
- 発熱は、一般的報告数とほぼ同じだった。
- 発熱したのは、3歳以下のみだった。
- 鼻炎は、一般的報告数より少なかった。
- 鼻炎又は発熱の見られた人に罹患者はいなかった。
以上の事より、フルミストの接種は、鼻炎が無いときに行うのがベストと思われるので、鼻風邪が流行する10月より前に接種する事が望ましいと考えられる。
a:9924 t:7 y:5
コメント