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しつけ

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しつけ【躾】

『しつけ』とは?
乳幼児期の育児から始まり、社会的な規則、礼儀作法にいたるまで、子育て全般にわたって親や養育者が子供の外面的な行動のみならず、内面の倫理的な成熟を促し、社会的自立にむけて指導していく継続的な営み。

つまり、しつけとは、社会性を育むための育児と考えられます。

社会性って何?
小児科学、児童精神医学的に見た社会性は以下の6項目に区分できます。
1:身辺自立
2:移動
3:作業
4:意志交換
5:集団参加
6:自己統制

各年齢における、発達項目と、しつけの変化※これらの項目は年齢別に記載されていますが、その子どもの発達(能力)に応じて、行われる必要があります。つまり、社会生活能力が2歳程度の4歳児がいたとすれば、2歳児程度の躾が必要ということです。
 また、実際的には、これらは、かなり交わって開始されており、4歳を越えたからいきなり母子愛着完了させるなどと割り切って理解しないでください。

発達項目しつけ
乳児期運動能力
1日のリズム
他人の認知
父母の認知(愛着形成)
自我出現
喜怒哀楽の学習
受容的に親子のリズムを合わせるようにして赤ちゃんの要求に応えながら毎日のルーチンを確立する。
母子、父子愛着形成
事故予防
褒めることで、自信を持たせる。
動き回れるようになった時期(8ヶ月~2歳)運動能力
強烈な自我の表現
1日のリズム
他人の認知
父母の認知(愛着形成)
安全のための予防的な制限や配慮をしつつ、遊びを通した運動
母子、父子愛着形成
睡眠リズムの獲得
事故予防
褒めることで、自信を持たせる。(叱るときは感情を込めず、理由とともに)
自我獲得:第1反抗期(2歳~4歳)自我の表現(言語取得)
他人の気持ちを知る
何でも自分でやりたい
母子・父子愛着形成の完了から他人との関係形成へ
自分の考え、他人の考えの違いを理解させる。
危険と安全について教える
自分でさせて、見守る。出来た部分を褒めることで、自信を持たせる。(叱るときは感情を込めず、理由とともに)
入学前の幼児他人の気持ちをくみ取る
自我の抑制
他人の立場になって考える
考えの違う他人の気持ちをくみ取り、共存するためのルールを理解させ、それに従って行動させる。
褒めることで、自信を持たせる。(叱るときは感情を込めず、理由とともに)
学童期~思春期他人の気持ちをくみ取る
自我の抑制
他人の立場になって考える
自分の気持ちを言葉で表す
責任や自制の感覚を増加させる。
褒めることで、自信を持たせる。(叱るときは感情を込めず、理由とともに)
理想的社会の仕組みを知る
読み書きそろばん
思春期~二次性徴
他人の気持ちをくみ取る
自我の抑制
他人の立場になって考える
自分の気持ちを言葉で表す
自立にむけて
現実社会を知る
読み書きそろばん
生殖について

☆睡眠に関するしつけ
親の生活態度がこどもに影響し、こどもの睡眠障害から、切れやすい感情になったり、不登校になったりすることが指摘されてきています。主に、母親の睡眠時間が不足すると子供の睡眠時間が不足し、父親の就眠時刻が遅いと、子供の就眠時刻が遅くなります。

睡眠時間が少ない→切れやすい性格や、うつ状態と関係する。
就眠時刻が遅く、起床時刻も遅い→不登校や学校の成績悪化と関係する。

お父さんの仕事上の問題もありますが、こどもの健全な育成のため、1歳すぎ頃からは、夜8~9時に就眠し、朝6~7時に起きる事を、家族みんなで行えるよう、努力しましょう。


育児で使う手法あれこれ

さて、躾で皆が利用している方法を心理学的な言葉で表しますと、ほとんどは『オペラント条件付け』と言われるものです。

オペラント条件付けとは?
ある行動を行った時、その行動に対して報酬や罰を与えることで、良い方向に対する行動をより強めること。
オペラント条件付け手法には以下に示す方法が主に用いられます。

オペラント条件付け

負の強化因子を与える正の強化因子を与える
物理的お金、お菓子、おもちゃ、トークン等の没収や減点
体罰
お金、お菓子、おもちゃ、トークン等の加点、付与
抱擁
社会的(非難、恐怖による統制等)
悪人が非難、処罰、災難、被害にあったお話を聞かせる。
(賞賛、関心、好意等)
偉人が賞賛されたお話を聞かせる。親切な人が賞賛されたり、感動されたり、幸運にあったお話を聞かせる。見せる。
行動的行動制限を強化して、自由度を減らす行動制限を緩和して、自由度を増やしてあげる
自己的自己の不満感を強化因子ととらえる自己の満足感を強化因子ととらえる

専門用語だと難しいので、実際の躾行為に見られる実例がどこに当てはまるのか考えて見ます。

ネガティブポジティブ
『○○出来なかったら、××してあげないよ』
物理的または行動的、自己的負の強化

××の内容がいつもしてくれる内容なのに、
今回だけ○○しないとやってくれないと子どもに感じられたら、
ネガティブな印象をさらに与えます。
『○○したら、出来たら、××してあげるよ。』
物理的または、行動的、自己的正の強化

これは、意欲を高める効果を期待していますが、
70~80%程度の確率で実行可能な課題であれば、
意欲を高める効果が期待できます。
実行不可能な確率が高ければ、ネガティブとなってしまいます。
旨く出来なかったらけなす。旨くできてもダメなところを探し出してダメ出しする。
社会的負の強化
旨く出来たら褒める。失敗しても、その行動過程で褒められるところを褒めてあげる
社会的正の強化
『○○しないと××してしまう(××になってしまう)。』
物理的負の強化、社会的負の強化の言い回し

『こぼすと服が汚れちゃう。』
『そこ歩くと落ちて頭打つよ』など。

『○○するとお化けが出てくるぞ』、『○○するとお医者さんに注射されるぞ』だと、負の強化に嘘も加わっています。
社会的正の強化、自己の正の強化の言い回し

『左の靴と右の靴はいつも仲良しなんだよ。だからバラバラに脱ぎ捨てたままだと、お互い離れ離れになって可哀想なんだ。ほら右の靴が寂しがって泣いているよ。だから靴をそろえて置いてあげようね。』

××が、靴が寂しがって可哀想という哀愁を誘ったり、靴の悲しい気持ちを助けてあげたという自己満足や社会的賞賛を期待させる
叱る
物理的、社会的、行動的、自己の負の強化

叱ったときには、必ず、褒められる部分を探し、児の意識が前向きになるような叱り方をしてください。
(叱るは感情を込めない。怒るは感情を込めている状態です。)
褒める
物理的、社会的、行動的、自己の正の強化

旨く出来たら褒める。失敗しても、その行動過程で褒められるところを褒めてあげる
タイムアウト(行動の制限)
行動的負の強化

部屋の隅の、何も無いエリア(つまらない空間)を決めておき、絶対やってはいけない約束事をあらかじめ決めておく。約束を破った場合は、そのつまらない空間で5分間たったままで、その空間から出てはいけない。出た場合はさらに5分間の追加となる。
このルールが理解可能かどうか、注意が必要です。また、タイムアウトは、慣れてくれば、買い物に行った先でも可能です。適当な、空間の隅の方を使って、『立っていなさい』という使い方ができますので、スーパーで言う事を聞かなくなったこどもにも有用です。

また、癇癪を起こして興奮しきっている子どもをクールダウンし、冷静にさせるという効果もあります。

幼児の場合は、時間を短縮し、また、立たせる必要はありません。座らせたり、寝かせておいてもかまいません。
(昔、押入れに入れられた経験がありますが、押入れは暗くて怖いですから、恐怖による統制といった意味合いが強くなりますが、タイムアウトには、恐怖はありません。)
行動の自由を与える
行動的正の強化

旨く振舞えていれば、子供の自由な移動、遊びが与えられる
トークンエコノミー
物理的負の強化と正の強化の混合

良いことと悪いことを決めておき、それぞれの良いことにプラス点を、悪いことにマイナス点をつけて決めておく。良いことをするたびに加算し、悪いことをするたびに減点する。週1回点数を精算し、得点に応じて好きなものを与える(これをお金で行う場合もあります)。
(これもある程度得点を得られる設定でないと、ネガティブな印象となります。)
児の裁量で、得点が加減されるので、意欲とともにリスクを感じ、自立性を高める狙いがあります。
 
 ※ただし、勉強などの、児本人のためになる事柄(児自身のためになる事柄)に対しては、対価を払うという行為は矛盾していますので、お勧めできません。

 対価を払う (お小遣いをあげるetc)という行為は他人のためになる事(例えば家事の手伝い)をした場合に支払うという姿勢が大切と思われます。
 (勉強は他人のためにするものではない。両親のためにするものでもない。児の将来のために、児自身が行うべきものであるという姿勢は必要です。)

 また、”悪い事をしなかったご褒美としての『お金や報酬などの対価』”もお勧めできません。
(お金をくれなかったら悪い事をしても良いと考える様になりかねません。これはおかしな事です。恐喝につながりかねません。)
謝る(ごめんなさいー)
自己的負の強化

許される経験が多ければ、『謝る事』が出来やすい。謝られる経験が多ければ、『許す事』が出来やすい。それに加えて、子供の自己欲求の強さと耐性の強さが影響する。(自己欲求は抱擁やスキンシップで低下させられます。)養育者は両者の気持ちを代弁し、それぞれの言い分があることをジェスチャーを交えて両者に伝え、お互いの耐えるべきところも伝える。


年子の兄弟喧嘩の仲裁に有効な場合がありますが、養育者にとって大変体力と知力を使う作業です。やりすぎると自分がへとへとになります。

 謝る習慣は人間関係を良好に保つために必要な行為です。しかし、許してもらえる見通しや環境整備など、謝りやすい状況を作り出してあげる事も必要です。そして最も重要な事は謝らねばならなくなったそもそもの原因を起さない事です。ついつい謝らせる事に重点を置いてしまいがちになりますが、何が一番大切なことであるかについて、養育者は見失わないようにしましょう。

 年中~年少児は記憶が長持ちしません。数分前にあった事を後から言葉で注意(謝りなさいと言っても)しても既に記憶にありません。事件が起こったその瞬間に介入できないのであれば、あとから介入しても全く無意味となります。
許す(いいよー)
自己的、社会的正の強化

謝られた方は必ず『相手を許した事』を相手に伝える。

怒りや憤慨に基づいていつまでも相手を許さないという態度は、抵抗や反発を生むばかりで相手にとって逆効果となる場合が多い。


『古典的条件付け』も躾に取り入れられています。
古典的条件付けとは?
 有名なのは『パブロフの犬』です。エサを与える前にベルを鳴らす事を繰り返すと、ベルを鳴らしただけで犬がよだれを出すようになるというものです。

 躾では、寝る前に歯を磨く事で、寝る前になると歯を磨きたくなるようにしつける、入眠する前に絵本を読んであげる事を繰り返すことで、絵本を読めば眠くなる(入眠儀式)、いつも決まった時間に勉強させることを続けることによって、その時間になったら、勉強しないと気がすまない状態を作り出したり、などです。


その他の手法

癒し系(児の自己欲求を減少させる効果)

・子どもの目線の高さで、子供の感情を言葉で代弁してあげて、親が理解していることを示す。そのとき、他人の気持ちを言葉で児に教えてあげる。
○○したかったの、ウンウン父さん・母さんわかってるよ、○○したかったんだよね。くやしいね。

(がまんさせた後は、違う話題を提供して、気分をそらしてあげる。)○○が外れて違う内容を言ってしまうと逆効果となります。

抱きしめながら、抱擁してあげる。

認知(教えてあげる:認知行動療法)

他人の気持ちを言葉やジェスチャーで代弁する。(1歳数ヶ月~4歳)
1歳半の時点までは、自分の気持ちは他人の気持ちと同じであると勘違いしています。
つまり、自分がしたい事は、他人もしたい事であると思っています。
次の発達段階『他人と自分の気持ちは違うものである』ということに気づく段階を経て、『他人の気持ちになって考える』ことができるようになっていきます。
○○ちゃんはA君のおもちゃ取っちゃったね。A君怒ってるね・エーンエーンって、泣いてるね。A君のおもちゃなのに、○○ちゃん取っちゃったね。悪いことしてるね。
○○ちゃん、A君におもちゃ貸してあげたね。A君喜んでるね。いい事したね、えらいね。
(子供の目線で、理解可能な様に単純明快に、悪いことをした時や良い事をした時、すかさずその行為の意味を代弁してあげる。)

・視覚遮断と視覚刺激(1歳数ヶ月~3歳)
視覚刺激は強烈に子供の注意・集中を固定する傾向があります。10ヶ月を過ぎると、光る・動く物は強烈に子供の注意をひきつけます。
この時期の子供は、視覚刺激が好きなのかもしれません。しかし、中にはそれほど好きでもないのにその魅力に取り付かれ、『止めたくても止められない』状況に陥っている子供もいます。(この状態をビジュアルドライブがかかっている状態といいます。)

・よく見かけるビジュアルドライブがかかっている状況
  『水溜りに足を入れたり、出したりして、水の波紋を見続けている。』
  『回転イスをひたすら回し続ける』
  『手に持った物をひたすらいじったりしている。』
  『きらきら光るものをひたすら見続けている』
  『長時間テレビを見続けている』

こういった状況に陥っている子供に言葉や、体を引っ張ったりしても、目の前にある視覚刺激が見えている限り、その状況に固執し、旨く次の行動に移れない場合があります。

ビジュアルドライブの止め方

・目の前に手をかざして、視覚を遮断する。目の前に親が顔をだして、視覚刺激を遮断し(視覚遮断)
・児の名前を呼びながら(聴覚刺激)、目の前に人差し指を差し出し、次の行動目標へ視線を誘導し、(視覚刺激)
・言葉がけ(聴覚刺激)と同時に自分も動き(視覚刺激)、児を誘導する。

目の前にある視覚刺激がとても児にとって、興味がありすぎる状態『アンパンマンのビデオを見続け、テレビを消すと癇癪をおこす場合』の時は、まず、テレビをみている状況下で、何度も中止予告を行い、【年長児なら児の前に(テレビとともに見える位置に)砂時計などの減っていく物を見せつつ、】親がテレビの前に顔を出し(視覚遮断)、中止予告のあと、テレビを終了するという方法が必要な時期がある場合もあります。

 子どもに与える不快を少なくしつつ、問題行動を起こさないようにして、良好な社会性を築いていく必要があります。
そういった事から、結果だけで判断せず、失敗しても、その行動過程で褒められるところを褒めてあげる(ポジティブ)ことで、子どもが自信を持って、自立性を向上させていければ、良いですが、時には、不適切な行動に対して叱る必要があります。時には、ネガティブルールを使う必要もあるでしょう。しかし、叱られてばかりでは、自分に対する評価が低下し、自己欲求が高まり、不快は募る一方ですから、出来るだけポジティブを多くして育てて行くべきと考えます。

二宮尊徳かわいくば、5つ教えて3つ褒め、2つ叱ってよき人とせよ。
某夜回り先生ポジティブとネガティブの比率は5~10:1程度となるように・・・
山本五十六やってみせ、言ってきかせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ



 最近叱ってばかりだなと思ったら、ポジティブを増やす試みをしてみるか、旨く褒める部分が見つからなければ、ただただ抱きしめるなどのスキンシップを増やして親の愛情を感じさせ、充足感を与えるだけでも不快を減少させる効果はあります。


必ず失敗する育児方法とは?

叱らなければならない、叱ってはならない、などの、『~ねばならない。』という両極端な育児は必ず失敗する傾向にあります。

 子どもの脳は高機能です。一環した方法では慣れ(耐性)が生じて、効果がなくなってきます。叱ったら、褒める事に重点を置き、褒めすぎたら叱ることに重点を置き、その最適な比率は児それぞれ違います。(たとえ兄弟であったとしても)※また同じ児でも年齢によって、変わってきます。

 これらの組み合わせにパターンを作らず、常に変化球を投げるつもりで、押しては、引いて、を繰り返して下さい。
うまくいかない場合、こどもは、問題行動として、『すねる』、『言う事を聞かなくなる』『暴力的になる』などの返事を返してきます。『押してだめなら引いてみる』です。
そういう育児方法の中で、児にとって最適なバランスをその発達年齢に応じて見つけて行ってください。それを出来るのは、ご両親だけです。
 
 叱る場合でも、子どもを尊重した叱り方(叱った後に、良かった点を述べて、次のやる気につなげる一言を付け加えるの)が理想的です。:(ポジティブな叱り方)

 ある保育所の園長先生いわく、『叱る、叱らない』という言葉では旨く表せない・・・どちらかというと、『ポジティブな叱り方』をするというのが良い表現であるといっています。
 

 2-3歳児は、何でも自分でやりたがります。児に任せたら余計に時間がかかるので、ついつい親がダメだしをして、変わりにやってしまう事が多くなります。こんな場合、時間やスケジュールに時間的余裕を持たせ、児が自分でやりたい事がおわるまで、静かに待ち、出来た部分を褒めて次につなげるという姿勢が必要な場合があります。

 旨く出来ない事柄に対して、『ここがこうだからダメだよ』で終わるのではなく、『ここが違っているよ、考えてごらん』と児本人に考えさせ、部分的に良かったことを褒めて、次のやる気につなげていくという方向で。

一般的に使用されるこれらの手法の優先順位は?
児に与えるネガティブな印象が少ない方法から使用していきます。

1:行動観察と折半案の提示
 児独特のこだわりがないか?について良く児を観察する。どうしても自分でやりたい事や、譲れないものがある場合、児と親で折半案を提示できるものなら、提示する。

2:理由を伝える、代替行動を示す。
 児にとって嫌な事をする場合、その理由をジェスチャーも加えて的確に児に伝える。(言葉の問題や、児の理解不足の問題で)的確に理由を伝えられない場合や、示す必要もないような場合、代替行動を示せる場合は、示す。(廊下を走るな(走るなでは子どもは混乱する、どうしたらよいのか分からない)→廊下では歩きなさい→褒める)

3:予告する。
 児にとって嫌なことをしなければならない場合、それを実行する日を決め、カレンダーなどにしるしをつけながら、毎日、あと何日でその日が来るかを言葉と視覚で予告し、耐性を持たせていく。(※カレンダーと日付という時間間隔がある程度理解できている児の場合です。)

4:恐怖による統治
 食べ物を残す→もったいないお化けがくる
 歯を磨かない→虫歯になって痛い
 野菜を食べない→口が切れて直らなくなる
 髪の毛を切らない→髪の毛に虫がわいてくるetc

5:強制施行:叱る
 理由を述べながら行う。
 出来るだけポジティブな印象をもたせるような叱り方を心がけてください。ダメだしで終わらず、うまくいった所を評価してあげる姿勢で、叱ってください。

※いずれにしても、嫌な事を我慢した児に対して、経過を褒める、抱きしめるなどのフォローは必要です。
また、恐怖による統治や強制を頻用することの副作用に注意が必要です。

心の耐性を育むための方法 

『心の耐性とは?』
欲求が阻止されても、不適当な行動に訴えたりせず、それに耐えて適応していくことのできる心の能力
1)物を必要以上に与えない。

2)困難や挫折にさいして安易に保護せず見守ること。

3)年齢相応に自分のことは自分でさせること。

4)子供からの不当な要求はしりぞけ、我慢させること。

5)お手伝いをさせること。

6)叱るべき時には叱ること。(怒りの感情は込めない)
叱られた理由を言葉もしくはジェスチャーで子供に単純明快に伝えて叱る事が重要。
理由を伝える事が出来なければ叱っても意味がありません。:常に叱られた理由を子供が理解できているか、注意してください。)

7)親が養育行動に一貫性をもつこと。
『同じ事を子供がしても、ある時は叱るが、ある時は叱らない』『子供に叱った内容と同じ事を親がやっている』など、子供が叱られた事に理由を見出せないような行動を見せない。

8)親が遊びの意義を理解して無用の干渉を避け、子供同士で対話して遊ぶ環境を保障すること。

9)子供に叱った直後でも、子供が良いことをしたら、笑顔で褒めてあげる。

子どもの問題行動

問題行動を起こす理由を探るとき、まず、通常不快が発生した時に人はどのように行動するか整理してみます。

通常の子どもの問題行動は児の持つ耐性を超えた不快が存在しないと発生しません。
ただし、この耐性を超えた不快の程度はこどもそれぞれ独特であり、一般的なひとにとってどうかと考えるだけでなく、その子どもにとってどうか?と考える必要があります。
耐性は前頭葉の加齢変化、しつけや環境による前頭葉発達に伴って作り上げられていきます。
ネガティブを多様すると、この耐性を乗り越えた不快が増加し問題行動が出てきますが、ポジティブだけだと、耐性の発達が損なわれます。
人は外的反応としてその不快を変更しようとします。
通常は適切な回避・変更行動(話し合いや、自ら行動して)をしようとしますが、出来ない場合、問題行動によって変更しようとしたり、問題行動によって、騒ぎを起こすことで、不快な状況から逃れようとします。
それすら出来ない場合、内面で処理する結果、抑欝や、解離性障害といった精神疾患を呈してきます。
問題行動を起こす子どもの原因の多くは・・・

1)自分の気持ち、欲求を自分以外に伝えて、不快な原因を変更できない。
(コミュニケーション不良:子ども側、相手側それぞれの原因)

2)耐性の未熟
(前頭葉の機能低下:脳自体の未熟性、普段から一般的な耐性の教育不足による未熟性、脳の機能的・器質的疾患)
(睡眠不足や、テレビゲーム漬けによる前頭葉血流低下、甘やかしによる前頭葉未熟)

3)自己や外界からの要求が厳しく、未充足感が強すぎる場合
(赤ちゃんがえり、親からの要求が厳しすぎる)

4)外界からの攻撃・束縛
(否定され続けると自尊行為として)

体罰は虐待のはじまりか?

・1995年アメリカ
3歳児の94%、12歳児の約50%は何らかのかたちで体罰を受けている。

・2000年日本において、1歳から7歳未満の幼児の保護者を対象にしたアンケートでは、子供を虐待しているのではないか?と思っている母親は18%存在し、

その内訳は、

80%:感情的な言葉
49%:叩くなどの暴力
17%:しつけのし過ぎ
0.4%:食事制限や放置

体罰の是非については今でも論争となっている。
アメリカの小児精神科医Larzelereは、限定された条件下で体罰は効果的であると述べている。

効果的な体罰とそうでない体罰あるいは虐待との境界は、

1)あまりにも過剰すぎない事。
2)叩くときは感情を抑えて、怒らない。
3)きちんとした理由の説明とともに行われること。
4)公の前ではなく、他人のいない場所で行う事。
5)何度も警告を繰り返すのではなく、一度警告した後に叩く。
6)状況に応じて柔軟に対応し、それが無意味だと分かったときには他の方法を取ること。

が上げられているが、必ずしも明確ではない。

しかし、体罰は続ける事によって効果が減弱して体罰の度合いがエスカレートすることが知られています。

『しつけ』としての体罰を法律で禁止している国々

スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、オーストラリア、キプロス、デンマーク、ラトビア、クロアチア、ドイツ、イスラエル

1998年、アメリカ小児科アカデミーにおける、効果的なしつけについての発表抜粋

良い叱り方

1)常に一貫性がある。
2)親は感情的にならず、行った行為を叱り、子供の人格を傷つけず、子供の気持ちをくみとり、なぜ叱られたのか理由を説明する
3)叱るだけでなく、励まし、良いことをしたときには『褒める』こと。

※『褒める』方法・すぐに子供に伝えて褒める
・ポジティブな言葉がけを行う。
・こどもが興味をもっていることや好奇心を伸ばす。
・結果ではなくプロセスを褒める。
・達成感を与える。 しつけが効果的であるためには、子供が愛されていて安全だと感じられる親子関係の中で行われる事が重要であり、そのような関係において、親に喜んでもらえることが子供にとって重要であるため、親の賛同や反対が他のどんな手段よりも効果的である。親の反応が安定していると、子供は自己の価値観を伸ばす事が出来、そのような良い関係の中で一貫したしつけが行われれば、体罰などの対応をする必要性は減ってくる

まとめ

 叱り方としての体罰は、非常に簡単に子供の行動を戒めることが出来ますが、頻用すると、効果が失われていきます。例えば、『子供のお尻を叩く』ことを体罰として頻用した場合、最終的に子供は「お尻を叩かれたくらいじゃ平気」となり、お尻を叩いても親の言う事を聞かなくなります。そうなると、体罰を頻用する親は『お尻を叩く』事以上に強い体罰を使ってしまいます。今度は『子供の頬を殴る』など。しかし、これも頻用すると効果がなくなってきます。・・・・これを繰り返すと、最終的に虐待に近づいていきます。

☆良いことをしたら、多少大げさに褒める。悪い事をしたら、例外なく口で叱る。
☆なぜ叱られたのか理由も説明する(説明できない、理解させられない場合は叱らない)。
☆悪い事をした直後でも、良いことをしたら、いつもどおり褒める。
☆体罰はめったに使用しない。
☆子供に叱った内容と同じ事を親がしない。


同様に、体罰ではない罰の使用について気をつけるべきことは・・・

罰の副作用

第1に,罰には即効性があります。すぐに効果を発揮しやすい。すぐに効果を発揮するから罰を使うわけです。ということは,その即効性によって使う方が強化されてしまうのです。問題行動が無くなることが報酬となり,罰を使うという行動が強化されてしまう。罰を使うことが繰り返され習慣になってしまいやすいのです。そのため,忍耐強く観察し記録を取り,解決方法を考えていくという手間のかかることをしたがらなくなるのです。罰に依存してしまう,罰依存症になってしまう。そういう副作用があります。

第2に,罰を受ける子どもの方は,罰を繰り返し受けることで罰への耐性が次第に身についていきます。その罰に耐えられるようになってくる。繰り返し罰トレーニングを受けるわけですから。耐えられるようになってくるということは罰が効かなくなってくるということです。そうなると,罰をグレードアップしなければならなくなる。つまり罰はエスカレートしていきやすいのです。これが2つ目の副作用です。

第3に,罰を受ける子どもは,相手に対して敵意や不快感,嫌悪感を次第に抱いていく。そのために相手との信頼関係とか人間関係が損なわれていく可能性があります。

第4に,罰の使用は強化されやすいということの延長上にあることですが,罰を使うとすぐに効果が出るわけですから,相手をコントロールできる,支配できるという感覚を持ってしまいます。つまり,権力関係がそこで発生しやすい。そこから,人権侵害に発展する可能性があります。体罰,いじめ,虐待などに発展しやすいのです。


理由を説明する必要性について
Q:叱る時、注意するとき、指導するとき、しつけるとき、常に理由を述べる必要があるのですか?

A:なんでもそうですが、極端なしつけは失敗します。理由を述べる必要があるのは、理由を理解できるか?で判断してください。以下の場合は理由を述べる事はできません。

1)子どもが理解できるレベルにまで解りやすく説明することが出来ない。
  a)子どもの理解力不足による。
  b)子どものレベルにまで、かみくだいた説明が出来ない:(親の説明能力不足による。)
  c)aとbの両者の混合

2)そもそも理由が無いに等しいもの。
 『家の中で靴を脱ぐ』などそもそも”習慣”とされるものには明確な理由が無いことが多く、『そうするものだ!』と叱る時が必要な場合はあるでしょう。
 これらの場合は、『そうするものだ』というしつけを多様せざるをえませんが、できるだけ叱る時は、『○○してはダメ』ではなく、『××しなさい』という具体的行動規範を示すように心がけることと、ダメだしが連発しないように気を配る必要があります。

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