こんな時どうしたらいいの?
2015-03-18 (水) 23:34:02更新
体温と発熱
- 赤ちゃんの体温はだいたい37.0℃前後です。
(38度以上は明らかに病気と考えて良いですが、37.5~37.9度までの体温は病気の時もあれば、病気でない時もあります。) - 赤ちゃんは体温を調節する働きが未熟で、病気でなくても着せすぎ、暖めすぎ、水分不足などで簡単に熱を出します。機嫌の良い時に汗を拭きとって、熱を計り、平熱を知っておきましょう。(外気が高い時は熱も高め、外気が低いときは熱も低めになります。)
- 赤ちゃんの体調の変化を知るには、発熱だけでなく、それに伴う症状や様子を良く観察しましょう。
- 熱が低めで手足が冷たいときは、靴下か、おくるみなどで、保温しましょう。
次の様な時は熱を計りましょう。
- 不機嫌
- ぐったりしている、元気がない
- 吐く
- ミルクの飲みが悪い
発熱した赤ちゃんの看病について
赤ちゃんは大人と違い、体温調節が未熟なため、容易に40℃の熱を出します。大人なら40℃の熱は重症であることが多いですが、生後3ヶ月以上の赤ちゃんの場合は熱の高さと病気のひどさには関係の無い事が多く、病気の重症度は主に哺乳力(水分摂取量)を参考にして決めます。
38℃以上の発熱では以下の方法を指導しています。
- 着せすぎず、薄着にする。
- 当たり前の事ですが、暖めれば暖めるほど、赤ちゃんの体温はドンドン上昇し続けます。
- 頭を氷で冷やす。
- 42℃以上で脳細胞はダメージを受けます。通常の感冒では水銀体温計で41℃を越える事はほとんどありませんが、とにかく冷やしたほうが無難です。(※40℃を越える発熱は、通常の電子体温計では正確に測れず、高めに表示されてしまいます。)(※36度以下の低体温にならない程度で冷却してください:38.0度以下で強く冷却すると低体温になる可能性がありますのでこまめに体温測定を行ってください。特に、下熱剤を使用しつつ冷却する場合は、冷やしすぎに注意し、こまめに体温測定をしましょう。)
- 水分を与える。
- 発熱によって水分が不足し、脱水状態になれば、体温はドンドン上昇します。
- 母乳・ミルクで構いませんが、飲まないときはアクアライトなどの赤ちゃん専用イオン水だけでも飲ませてください。
発熱時の小児科受診のタイミング
100%完璧な対応方法など例え大人であっても存在しませんので、
『ちょっといつもと違う』と思ったら、近医の小児科医を受診してみて下さい。
大まかな目安として。生後3ヶ月以上の子供の場合、下記を参考にして下さい。
- 夜間でも至急小児科受診の必要があるもの
- 生後3ヶ月未満の新生児が38度以上の熱を出す。
- 元気が無く哺乳力が低下している児(熱の有無は問わない)
- 日勤時間帯の小児科受診で良いもの。
- 生後3ヶ月以上経過していて、38℃を越える発熱でも哺乳力は通常通りの児
嘔吐
赤ちゃんはちょっとした事でお乳やミルクをもどします。胃の構造が大人に比べて吐きやすく出来ているためで、ゲップや軽い咳とともにもどす事もあるのです。そのため、よく吐くといっても異常ではない事も多いのです。しかし、まれに病気の徴候の1つとして吐き気を伴っていたり、嘔吐をきっかけに病気が見つかる事もあります。吐く回数や量が多く、『おかしいな』と感じたときは、診察を受けるようにしましょう。
管理方法
頻回に嘔吐する場合ではミルクは中止し(母乳はOK)、3-4時間飲ませないで、その後、アクアライトなどの赤ちゃん用イオン飲料をスプーン1杯から少量、頻回に飲ませてみましょう。
様子を見て良いもの
- 授乳の後で少し吐く。
- ゲップとともに少量のミルクが口から出る。
- 咳をしたはずみに吐いた。
夜間でも至急小児科受診の必要があるもの
- 下痢と嘔吐が重なり、哺乳力が低下し、水分を受け付けない。
- おしっこが減って、ぐったりしてきた。
- 嘔吐物に血液または、黒いモヤモヤした粕が多量に混ざってくる。
- 黄色~緑色の吐物ばかり
- 多量の血便を伴うもの
- 15分周期で大泣きが続いて、嘔吐するもの(特にロタワクチン接種後2週以内)
日勤時間帯の小児科受診で良いもの。
- 嘔吐が続いているが、回数は少なく、哺乳力はまずまずで、元気はあるが、体重が減ってきた。
※吐いた時には、寝た姿勢のままだと誤飲して窒息する心配もあるため、頭の方を高くして少し斜めに寝かせ、顔は横に向けておきましょう。
※赤ちゃんが吐きにくい体位は左側を下にした体位(左側臥位)です。
便(うんち)
- 赤ちゃんのウンチは毎日の調子や食物などによって固さ、回数が変わり、個人差があるのが特徴です。
- 母乳の赤ちゃん、月齢の低い赤ちゃんでは病気でなくても1日5-6回の水様ウンチがでることも珍しくありません。哺乳後毎回出る事もあります。
- 緑色のウンチは空気に触れて酸化した便であったり、腸管内に長時間停滞した便の色であるためで、心配ありません。
- 常に白っぽいウンチを出す場合は便を持参して小児科を受診して下さい。
下痢
頻回の水様下痢の場合は、普通ミルクは中止(母乳は一応OK)し、アクアライトなどの赤ちゃん専用イオン水や、下痢用ミルク(乳糖除去乳:ラクトレス、ノンラクトetc)に変更しましょう。果汁も多すぎると、下痢をひどくします。
様子を見て良いもの
- 機嫌がよく、食欲もあるが、ウンチの回数がやや増えた。
- 下痢であっても、体重増加は良好で、機嫌、食欲も良好
- ウンチが多少柔らかい感じがする。
夜間でも至急小児科受診の必要があるもの
- 水分を受け付けない。
- 水分を与えると飲むが、すぐ嘔吐してしまうことが続く。
- 唇、口の中がカラカラに乾いている。
- おしっこが減り、ぐったりしてきた。
- ケイレンなどが出てきた。
- 大量の真っ赤な血液が混ざる。
日勤時間帯の小児科受診で良いもの。
- 点状の血便が少し混じる。
- 発熱を伴ってきた。
- 体重が減り続けている
便秘
母乳の代わりに粉ミルクを与えた時や気候の変化、成長の過程、腸内細菌の変化、離乳食への変更過程で赤ちゃんはすぐ便秘を起こします。でも機嫌がよく哺乳力があれば3日ぐらいの便秘は気にする必要はありませんが、お腹がパンパンに張っていたり、哺乳力が落ちてきたら、排便を促してみましょう。
『の』の字マッサージ
腸の運動を助け、便を出やすくします。おへそを中心に小さい『の』の字を書きながらマッサージをしましょう。
綿棒浣腸
摩擦が起きないように、綿棒にベビーオイルなどを塗り、肛門の周囲を軽く刺激します。もしそれでも出なければ、綿棒の先を肛門に1cmまで入れてゆっくりと回転させます。
※以上の方法でも排便がない場合は、幼児用浣腸を薬局で購入して半分(5~10ml程度)使用するか、小児科受診し相談する事をお勧めします。
湿疹
赤ちゃんは湿疹が出やすいです。生後1ヶ月超えてから4ヶ月程度までよく湿疹が出ます。それぞれの鑑別は難しいですが、殆ど全ての湿疹に共通することは、
- 清潔にする(1日1回赤ちゃん用石鹸を使用して洗ってあげる)
- 擦らない
- 良く乾かす
という事です。
あせも(汗疹)
赤ちゃんの頭、額、首周り、脇の下などの汗のたまりやすいところにかゆみのある小さいブツブツが出来ます。暑く、湿度の高い夏、最近では冬でも見られます。汗をこまめに洗い流して、涼しい環境にすれば、数日で治るものです。湿疹がひどくなったら、小児科を受診してください。
オムツかぶれ
オムツをあてているところが赤くただれていたり、ジクジクしていたらオムツかぶれの可能性があります。軽いものは、オムツをこまめに取り替え、清潔にしていれば治やすいです。ひどい場合はオムツを替える度にお湯で洗い、コットンやキッチンペーパー など、柔らかいもので優しくふき取りましょう。時には、しばらくオムツを外して十分にお尻を乾かすと治りも早く、予防にもなります。それでも治らない場合は、小児科を受診しましょう。
皮膚カンジダ症
オムツかぶれに合併しやすい、皮膚のカビです。お尻を拭いたあとは、良く乾燥させましょう。改善しない場合は、小児科を受診しましょう。
脂漏性湿疹
ホルモンバランスが思春期に似ており、生後1ヶ月から4ヶ月頃までこの湿疹が出やすいです。
基本は1日1回赤ちゃん用石鹸で擦り過ぎない程度でやさしく洗ってあげてください。
乳児湿疹
特に、特定できない乳児の湿疹を総称して使用されます。良く観察すると、接触性皮膚炎だったり、アトピー性皮膚炎だったりします。経過観察することが重要です。酷い場合は、小児科を受診しましょう。
付録1)イオン飲料水
- 一般的な小児用イオン飲料が良いですが、味が質素なので、嫌う場合もあります。
- 代表的なものは、大塚OS-1や和光堂アクアライトORSなどです。
- 当院では和光堂アクアライトORSを受付で販売しています。
小児用イオン飲料として適しているものは、
- 塩分が多目
- ブドウ糖が入っている。
です。
代表的なイオン飲料の成分
種類 | ナトリウム濃度 | カリウム濃度(mEq/L) |
---|---|---|
WHO推奨 | 75 | 20 |
大塚OS-1 | 50 | 20 |
アクアライトORS | 35 | 20 |
小児用イオン飲料 | 30 | 20 |
スポーツドリンク | 21 | 5 |
- 以上から一般スポーツ飲料はナトリウム濃度が低く、適していないことがわかります。
- 血中のナトリウム濃度が低くなると、元気や食欲が低下します。
- 血中ぶどう糖も不足すると元気がなくなってきます。
- イオン飲料水のナトリウム濃度が高くなると、やや飲みにくくなります。OS-1は、乳児が飲まない事が多かったので、アクアライトORSを採用しました。
※ちなみに、一般的スポーツ飲料のアクエリアスには、蜂蜜エキスが使われており、1歳未満では服用しないほうが無難です。
※また、病気で弱ってるのに、カロリーオフとか、ノンカロリーとか書かれているイオン水を飲まさないようにしましょう。
家庭で作るイオン飲料水
さて、味つけはどうあれ、家庭でもイオン飲料は作成可能です。
通常嘔吐などは、夜間突然はじまりますので、お店に買いに行くわけにもいきません。下記に作り方を示しますので、やってみてください。
なお、幼児などで、お茶しか飲んでくれない場合は、塩や砂糖を少しだけ入れたものを飲ませてあげると、まだましです。
★経口補水液の作り方
- 砂糖40g(上白糖大さじ4と1/2杯)と食塩3g(小さじ1/2)を湯冷まし1リットルによく溶かす。
- かき混ぜて飲みやすい温度にする。
- 果汁(レモンやグレープフルーツなど)を搾ると飲みやすくなり、カリウムの補給にもなります。
ナトリウム濃度50mEq/l, カリウム20mEq/l程度の経口補水液の出来上がりです。
※冷やすと嫌がる場合がありますので、冷やさないで飲ませてみてください。
※イオン飲料は下痢や嘔吐のときに飲む飲料水です。決して健康な時に飲むものではありません。
※イオン飲料には、ビタミンB類は添加されておらず、飲みすぎるとビタミンB不足を引き起こします。その結果、飽食の時代であるにもかかわらず、小児脚気などを起したと疑われる例も報告されています。
幼児では、元気な時は、野菜ジュースなどを飲ませるようにしましょう。
付録2)小児夜間救急
まずは上述した対処方法を行ってください。
ネットによる確認
また、不安がある場合、日本小児科学会監修の『こどもの救急』ホームページにアクセスし、自動判定結果を参考にするか、以下に電話して相談してみても良いでしょう。
電話相談
全国的にプッシュ回線で”#8000″による夜間子供救急相談ダイアルというサービスが始まってきています。
以下に電話すると、看護婦または医師が夜間救急を受診すべきかどうか電話で教えてくれます。
大阪府小児救急相談事業
夜8時~翌朝8時まで
和歌山子ども救急相談ダイアル
日曜、祝日、年末年始の19:00~23:00
いざ、受診が必要となったら・・・
和歌山県救急医療情報センター
和歌山市周辺の方は、通常は(財)和歌山県救急医療情報センターへ電話し、受診可能な医療施設を紹介してもらいます。
(財)和歌山県救急医療情報センター
TEL:073-426-1199(24時間体制)
和歌山市夜間・休日応急診療センター
通常お世話になる事が多いのは、中央保健所に隣接している和歌山市夜間・休日応急診療センターです。
TEL:073-425-8181
最後に
救急システムを早く受診しすぎると、診察・検査しても正常であるため、いったん帰宅する事となり、数時間後に状態が悪化する場合があっても、一度受診しているために再受診せず放置されるケースがあります。(幼少児の病状は約3-6時間単位で変化します。)
どのような状況でも『哺乳力低下・水分摂取量低下』は、子供の至急受診のキーワードとなる事を理解してください。