コロナ対策としての紫外線の話
あけましておめでとうございます。
コロナワクチンの話で、申しましたように2021年はまだまだコロナと共存の年となります。
コロナウイルスの除菌手段として一般的なものと当院の考えを述べます。
ちなみに、ちょっと話がそれますが、感染予防と除菌は少し違います。
現時点でコロナ感染の主な経路は飛沫(一般的な人にわかりやすく言うと、至近距離で飛沫を吸い込む事)感染ですので、マスク、社会的距離、換気(換気が不十分な施設ではヘパフィルタ空気清浄機)です。これ以外ないです。プラズマクラスターとか、低濃度オゾンとか、低濃度次亜塩素酸ミスト噴霧とか、低濃度二酸化塩素ガスとか、空間除菌は全然ダメです。
プラズマクラスター空気除菌あてにならん説
一時期、ニュースでこんなのが流れました。『シャープ、プラズマクラスターで新型コロナの約91%不活化に成功』が、使用したプラズマクラスター濃度が約1,000万個/立方cmで、業務用プラズマクラスターの400倍近い濃度で、1000万という濃度は、まだ人間が吸入して安全かどうかわからん濃度なので、市販されないです。
低濃度オゾン空気除菌あてにならん説
奈良県立医大が4ppm濃度のオゾンで15分で99%除菌を確認していますが、人体が吸入しても大丈夫なオゾン濃度は0.1ppm以下ですので、これだと藤田保健衛生大学が調べた結果、10時間必要で、隣で吐き出された飛沫の除菌には無効です。(ただし、接触感染対策としては、有効です。当院も高濃度オゾンによる待合室の消毒を1日1回、終業時に行っています。)
次亜塩素酸低濃度二酸化塩素ガスはそもそも医療機関がコロナ除菌としての有効性を証明していません。次亜塩素酸水の空間除菌は日本の会社は宣伝しているものの、WHOやアメリカCDCが認めていません。
接触感染予防としてはどうか
プラズマクラスターとナノイーは接触感染予防の除菌効果としても十分なデータは出ていません。低濃度オゾンは10時間、高濃度オゾンは15分で除菌が可能ですので、利用は可能ですが、今、感染者が隣にいて、環境にウイルスを引っ付けた物を即座に除菌できません。高濃度オゾンは無人の時しかできませんし、終了後数時間はオゾンが残存するので、中に入れなくなります。
アルコールや、洗剤での洗浄は有効ですが、アルコールや宣材は毎回噴霧ふき取りすると手間とコストがかかります。
次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム水は、物の消毒には有効ですが、手指消毒には、つかえません。また、次亜塩素酸水はそもそも、表記が怪しいものが多いそうです。
紫外線のコロナ除菌能力について
紫外線は、電気から作れますし、通電をやめれば、すぐに部屋が使えるようになります。ガスによる除菌より便利で使いやすいです。
こちらの論文からコロナウイルスの除菌に必要な紫外線強度について考えてみます。
『254nmの紫外線では、乾燥コロナウイルスに対しては、0.849×9=7.6mJ/cm2で検出不能レベルまで減少し、湿性コロナウイルスに対しては、0.849×4=3.4mJ/cm2で検出不能レベルになります。』
殺菌灯について
当院が採用している殺菌灯東芝、Panasonic GL20(250nm:耐久時間6000時間)の出力は距離1mのところで、77μW/cm2→0.077mW/cm2なので、2.5m下では、(距離の2乗で弱まるので)2.5×2.5=6.25分の1まで低下しますから、0.01232mW/cm2となります。しかし、殺菌灯は使用後、出力がそのうち70%まで落ちると言われていますので、0.01232×0.7=0.008624mW/cm2となります。
前述の文献で述べられているコロナウイルス殺菌必要強度3.4mJ/cm2に達する照射時間は(3.4÷0.008624÷60=)6.5分で、7.6 mJ/cm2に達する照射時間は、14.7分です。
ちなみに、当院のトイレで実際に測定すると、5分で7 mJ/cm2に達していますが、これは、GL20が2本あるからです。
紫外線LEDについて
最近は、LED紫外線による消毒器なんかもネットで中国製が売られています。また、空気清浄機の中に入っていて、空気を殺菌するなどと述べているものがあります。本当に空気殺菌が紫外線で可能なのでしょうか?
こちらの大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センターサイトの情報を信じれば、280nmの波長と、250nmの波長ではウイルスへの殺菌強度が非常に違うということです。
日亜化学の話では、250nmのLEDでは、耐久時間は2000時間が限界だそうで、蛍光灯以下となります。280nmにすることで2万時間を達成できるそうです。
こちらの記事では空気清浄機に取り付けられた紫外線LEDですが、280nmであれば、至近距離で30秒も必要と書かれていますので、そうなれば、空気清浄機に取り付けた場合、殺菌される前に、空気が通り抜けることになりますし、もう少し高性能の250nm以下のLEDだとすると、毎日10時間使用したとしたら、1年もたずに劣化することになります。ので、空気清浄機に取り付けられている紫外線LEDは、空気除菌には、あまり有効ではないと考えるべきでしょう。
新型紫外線ではどうか?
最近の研究で、ウイルス除菌に最も効果が高いのは222nmの紫外線で、この周波数の紫外線は、無害に近く、人がいる環境で照射できるというものです。
このタイプの紫外線はウシオ電機が特許を持っています。それについて考察します。
ウシオ電機のCare222では、どうでしょうか?
広島大学の実験では、0.1×30=3mJ/cm2でコロナウイルスは不活化できたそうです。
(記事では30秒で!とか書いてますが、そんな至近距離では実用できません!)
これは、多く見積もって、250nm紫外線のおそらく2倍の殺菌性能と考えられます。
ランプの定格寿命は約3000時間です。
市販されているランプの強度は、距離1mで0.01mW/cm2なので、コロナ除菌には5分必要です。
当院のような2.5mの距離では、50分も必要です。トイレの除菌パワーとしては、GL20に劣る計算になります。これは、現時点で市販されているCare222の光量がGL20の7分の1と小さいためです。これだと、空間空気除菌には使用できず、常時点灯させることによって接触感染予防が周囲2.5mで常時可能というレベルと考えられます。が、常時営業時間中点灯した場合、当院の営業時間は34時間/週なので、1.5年で買い替えとなります。
1個20万円ですから、コスパとしては、悪すぎます。もし、当院の待合室66m2に取り付けた場合は、10~11個必要で、1.5年毎に200万消費することになります。目に優しいというのが、特徴ですがこれは、ちょっと無理ですね。今後価格が1/10くらいになったら現実的ですが。
一部トイレなどに導入しているクリニックもあるようですが、上記のように正確に計算すると、人感センサーで無人の時にGL20をダブル照射する方がよっぽど効果的で実用的と考えます。
まとめ
- 旧来の殺菌灯は、空間、空気除菌には使用できない。接触感染予防としてはとても有用。コスト、耐久性で他の紫外線に勝る。
- 250nmLED紫外線は耐久性に問題あり
- 280nmLED紫外線では殺菌灯より効果が劣る
- 222nm新型紫外線は、現時点では出力が弱く、高価で耐久性に劣る。
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