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小児用13価肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ってなに?
- 詳細は肺炎球菌JPを御参照ください。主に鼻腔に常在する細菌ですが、感冒罹患後に、鼻腔から血中もしくは、肺内に入り込み、増殖し、酷い炎症を引き起こします。蓄膿や中耳炎の原因にもなります。抗生物質は比較的効きやすい細菌ですが、最近は耐性菌が出てきております。私たち小児科医は、常にこの細菌を意識して感冒治療を行っていますが、抗生物質処方がたった1日遅れるだけで入院が必要なところまで重症化してしまう場合があります。
- 年齢が上昇するにしたがって肺炎球菌とインフルエンザ菌が鼻に常在してきます。
- また、集団保育をすると、約8ヶ月程度で、80%の子供達の鼻にインフルエンザ菌と肺炎球菌が定着します。
肺炎球菌って怖いの?
- 抗生物質が良く効きますので、重症化しても命に関わることはやや少ない印象があります。しかし、悪化速度はきわめて早く、毎年当院でもこの細菌が原因で2名くらいは、入院が必要かどうかの瀬戸際に立たされる子供たちがいます。ヒブより怖いとは思っていませんが、嫌いな細菌です。
- ヒブは、進行速度が遅いため、発見しにくく、抗生物質が効きにくいので、髄膜炎になると、直りにくいため、後遺症を残す確率が高くなります。一方、肺炎球菌は、進行速度が極めて速く、髄膜炎や敗血症になると、(耐性菌でない場合は)直るときはすっきり直るが、治療が遅れると死亡しやすいという特徴があります。
- しかし、多剤耐性肺炎球菌が増加してきており、もし耐性菌ばかりになられてしまうと、ヒブより怖い存在になります。それだけ毒性は強い菌です。
多剤耐性肺炎球菌地図
今のところ和歌山は耐性化していませんが、
大阪は耐性化していますので、時間の問題と言う時期に接種が開始されました。
肺炎球菌で迷惑な病気を起こす頻度は?
- 正確な実態頻度は不明ですが、侵襲性肺炎球菌感染症において、5歳未満では菌血症で年間18000人程度、髄膜炎で300名程度と推定されています。比較的抗生剤に反応が良いため、潜在性菌血症は診断されずに外来で治癒している人が多数存在していると考えられているます。
- では、その年齢別頻度(判明している範囲内)は下記のグラフとなります。低年齢と高齢者が主なターゲットとなります。
ワクチンの効果は?
- 今回の小児用は13価ワクチンといいます。人に病原性を発揮する肺炎球菌の種類は約30種類存在します。その内、病原性の高いもの23種類についてのワクチンは成人用23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)といいます。これは、10歳以上では効果がありますが、それ以下の年齢では、免疫効果が悪いため、さまざまな免疫賦活物質と結合させて、13種類の肺炎球菌に対して低年齢でも十分な免疫をつける事が出来るように調整したものが、今回の13価肺炎球菌ワクチン(PCV13:商品名プレベナー13)です。
※対応莢膜抗原(1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、33F)
- よって、全ての肺炎球菌をカバーできていません。カバー率は悪性度の高いものを選りすぐり、『侵襲性感染症の約65-70%』といわれています。
- さて、つまりこのワクチンでは日本において、肺炎は予防できるという記載にはなっていません。つまり、肺炎から血中に侵入するのをブロックする効果がうたわれています。しかし、血中に侵入しないだけでも患児にとってはかなり違いますし、治療が遅れても大丈夫である可能性が高くなります。肺炎は抗生剤で治せます。問題は、抗生剤で直す前に脳などに侵入されてしまうことだったのです。(ただ、日本では適応されていないというだけで、外国の2001-2004年での肺炎球菌性肺炎に対する効果判定では、65%予防できたとするデータがちゃんとあります。)
- 次に肺炎球菌による中耳炎を30%ほど低下させる効果も確認されています。
副反応は?
- 有名な副反応は『発熱』です。約30%弱の方に37.5度以上の発熱が接種後0-1日以内に2日以内認められます。
- それ以外の高頻度の副反応では局所の腫れがありますが、この頻度は三種混合ワクチンと同程度です。
- 上記以外の副反応は、三種混合ワクチンとほぼ同じです。
接種方法は?
定期接種(公費)としての接種方法
接種開始年齢 | 初回免疫 | 追加免疫 | 合計接種回数 |
---|---|---|---|
2ヶ月以上~7ヶ月未満 | 3回 | 1回 | 4回 |
7ヶ月以上~12ヶ月未満 | 2回 | 1回 | 3回 |
1歳 | 1回 | 1回 | 2回 |
2歳以上~5歳 | 0回 | 1回 | 1回 |
- 初回免疫
- 1回0.5mLずつを3回、いずれも27日間以上の間隔で皮下に注射する。
- 追加免疫
- 1回0.5mLを1回、皮下に注射する。ただし、3回目接種から60日間以上の間隔をおく。
この間隔より短い間隔で接種した場合は、任意接種となり、自費接種となります。
任意接種(自費)としての接種方法
- 以前7価肺炎球菌ワクチンを接種完了した5歳未満の方。
直近の7価ワクチンから8週以上の間隔をあけて、1回だけ追加接種する。
(アメリカでは、公費で認められていますが、和歌山市など一部の地域では自費接種となっています。)
- 慢性疾患を持つ子供には、適応年齢が広がります。
慢性心疾患(チアノーゼ性心疾患、心不全など)、慢性肺疾患(コントロール不良の気管支喘息など)、糖尿病、髄液漏、人工内耳挿入者、解剖学的・機能的無脾症候群(sickle cell diseaseなどの、ヘモグロビン異常症、先天性、後天性無脾症候群または、脾臓機能異常症)、免疫低下症(AIDS、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、免疫抑制剤治療中患者、放射線治療中の患者、白血病患者、悪性腫瘍患者、悪性リンパ腫、臓器移植患者、先天性免疫不全症
- 24か月(2歳)~71か月(6歳未満)
3回接種終了して、4回目接種できていない方 1回接種 2回以下の接種しか終了していない方 8週間隔で2回接種 - 6歳以上の方で過去に一度も接種していない
- 1回接種
ただし、まだ日本では6歳以上での適応が取れていないため、自己責任での接種となってしまいます。適応内で行う場合は、今の所6歳以上では、成人用23価肺炎球菌ワクチンを使用します。
注)小児用13価肺炎球菌ワクチン(PCV13:プレベナー13)を小児期に接種した(慢性疾患を持つ免疫低下状態の)方は、2歳以上の年齢に達してから、最終の小児用13価肺炎球菌ワクチン(PCV13:プレベナー13)から8週以上間隔をあけて成人用23価肺炎球菌ワクチンを追加接種する事が勧められています。
お勧め度は?
- 定番ワクチンなのでお勧めは当然ですが。感冒罹患後に鼻炎が長引いて、咳が長引きやすい子供は特に接種をお勧めしています。