現在販売されている、4種混合ワクチンは世界初のセービン株不活化ポリオワクチンの配合された製剤で、その免疫効果は、ソーク株より弱く、安全性への検証が少ないという事で、当院では、使用を見合わせ、武田の三種混合ワクチンとサノフィパスツール社のイモバックスポリオ皮下注を使用しております。
効果の高い不活化ポリオワクチン(ソーク株)の入ったジャパンワクチン株式会社の4種混合ワクチン(スクエアキッズ)は当初の予定では本年11月冬頃から販売開始予定でしたが、現在、
- 厚労省の審査が遅れており、12月以降にずれこもうとしている
- さらに本年10月で武田、ビケン、化血研の三種混合ワクチンが製造終了となるそうです。
実は、当院のように、国産4種混合をつかわずに、スクエアキッズの登場まで三種混合ワクチンとイモバックスポリオ皮下注を使用している医院は多いようで、そのシェアをスクエアキッズ発売前に、奪うには、非常に効果的な作戦だなあと思わざるを得ません。
まさに、官民一体の外資系への苛めに思えます。
国産VSフランス産-両者の効果の違い-
以前から国産セービン株由来不活化ポリオワクチン(国産4種混合ワクチン:テトラビック、クアトロバック)と、フランス製ソーク株不活化ポリオワクチン(イモバックスポリオ皮下注)との効果の違いは、国産が弱いという事は、論文でも紹介されていましたが、定期接種導入前の国内での比較試験でも明らかな違いが出ています。
第4回不活化ポリオワクチンの円滑な導入に関する検討会資料にみる違い
この調査委では、国産セービン株とフランス産ソーク株との互換性を調べた調査ですが、C群とD群の2回接種までは、C群は国産2回、D群はフランス産2回で揃えられており、その抗体測定採血S2がちょうど両者の効果の違いを見るのに適しています。
左の表を見ても分かる通り、野生株ポリオ1型抗体で10倍、3型で2.6倍の違いが出ており、国産は惨敗である。しかもこの結果は本来筋注するはずのイモバックスポリオを皮下注してこの数字であり、筋注してたら、もっとすごい差が出てたんだろうと思われます。
ちなみに、現在シリアで復活しているポリオは1型です。
なお、国産4種混合には水酸化アルミニウムというデリバリーシステム・運搬体系アジュバントが含まれており、これは、接種部位に抗原を貯留させ抗原提示細胞による取り込みをよくすることにより、Th2→B 細胞による抗体産生を刺激するもので、これが入って、この程度である。
この経路のアジュバントには、抗体量を上げる効果はあるが、細胞性免疫に記憶させて、抗体価を長期に維持する効果は期待できないと考えられる。(ちなみに、TLRに働くタイプのアジュバントは、その効果が期待されている。)
三種混合ワクチン製造中止後どうするか?
ある医師は、2014年12月までの消費期限の三種混合を多量に在庫して使用するという事も考えている模様で、そのためには、8-9月頃から備蓄せねばならないという事になりますが、ここで、不確定要因は、厚労省の認可をするという行為という事になります。
これは、技術的な問題ではなく(いろいろ理屈をこねて来るかもしれませんが)、人間関係のおりなすものであり、予測不能です。
なので、いつまで続くかわかりませんので、スクエアキッズ発売前に、三種混合が手に入らなくなったら、しばらくは、国産四種混合に乗り換えざるをえないと思われますが、幸、この抗体価が低い事が問題となり、イモバックスポリオ皮下注を使用した5回目の不活化ポリオワクチン接種が計画検討されており、約3年後くらいを目途に定期接種化される予定で、最終的には、国産を使用した皆さんもある程度の抗体価を獲得できるようになるのではないかと考えております。
最終的には
最終的には、すべての国は、現在の国産と同じようなセービン株由来の不活化ポリオワクチンへ変更していく必要はあるのですが、抗体価は高く維持していく必要もあり、そのためには、現在の国産ワクチンならば、接種回数を増やすか、抗原量を増やすか、新たなアジュバントを加えるか、はたまた、皮下注をやめて筋注に変更するか、などが必要となってくると思われます。
それまでは、フランス製のイモバックスポリオ皮下注は欠かせない存在なんだろうと思います。
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