ヒブワクチン
ヒブワクチンって、知っていますか?
Hibとは、Hemophilus influenzae type bの略です。日本語ではインフルエンザ菌b型といいます。
これに対するワクチンの略称をHib(ヒブ)ワクチンといいます。
インフルエンザ菌B型(ヒブ)って、なに?
名前に「菌」がつくとおり細菌です。
冬に流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスAソ連型/A香港型/B型の感染としてよく知られていますが、細菌であるHibはまったくの別ものなのです。
Hibは、子どもの鼻の奥やノドにすんでいます
インフルエンザ菌B型(ヒブ)って、怖いの?
怖い細菌です。
普段から子どもの喉や鼻に住んでおり、風邪の時に暴れだします。
よく "風邪をこじらせた" などというときにこの菌が原因の場合があります。
他の細菌と比べ…
- 症状が出にくく、
- 薬が効きにくく、
- 発見された時には既に脳髄膜炎に至っている事が多く、
- あわてて入院加療しても、5%は死亡し、25%は後遺症(難聴やてんかん等)を残します。
5歳未満の子ども500~600人が毎年この菌による髄膜炎を発
症しています。
子どもにヒブワクチンというチャイルドシートを
5歳未満の子ども25~30人が毎年この菌によって死亡しています。これは、チャイルドシート義務化前の同年齢の交通事故死者数と同じ数です。
チャイルドシートは致死率を5分の1に低下させますが、このワクチンはインフルエンザ菌による致死率を100分の1まで低下させます。
チャイルドシートの20倍もの効果があるこのワクチンについて考えてあげてください。
ヒブ髄膜炎の頻度は?
細菌性脳髄膜炎の原因菌としてインフルエンザ菌は最も高頻度で、予後不良なものであり(図1)、近年その頻度は増加の一途をたどっています。(図2)
図1:細菌性髄膜炎の原因菌と予後 | 図2:小児インフルエンザ菌感染症罹患率 |
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世界のヒブワクチン
1990年代にはいって欧米を中心にヒブワクチンが導入され、1998年、WHO(世界保健機関)は乳児への定期接種を推奨する声明を出しました。現在、アジアやアフリカの国々を含む100カ国以上で導入されて、90カ国以上で定期接種プログラムに組み込まれています(図3)。その効果は、グラフのデンマークの例のように劇的です(図4)。このようにすでに定期接種している国では、ヒブ髄膜炎が過去の病気となりました。
図3:Hibワクチンがまだ導入されていない国 (2003年の時点) |
図4:デンマークにおける Hib髄膜炎の発生数の推移 |
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アジアでヒブワクチンが導入されていなかったのは日本と北朝鮮だけだった!? このように日本のワクチン行政は世界でも低レベルです。 ヒブワクチン以外でもまだまだ日本のワクチンは不十分な部分が多々あります。 |
ヒブワクチン導入後ヒブ髄膜炎は劇的に減少しています。 |
ヒブワクチンの接種方法は?
ヒブワクチンの接種の時期と回数は三種混合ワクチン(DTaP)と同じです。1歳での追加接種も含めて合計4回接種します。たとえば三種混合と同時に反対の腕に接種します。これを同時接種といいますが、ヒブワクチンを導入している国々では普通に行われている方法です。
接種開始年齢 | 初回接種 | 追加接種 | 合計接種回数 |
---|---|---|---|
2ヶ月以上~7ヶ月未満 | 3回 | 1回 | 4回 |
7ヶ月以上~12ヶ月未満 | 2回 | 1回 | 3回 |
1歳以上~5歳未満 | 1回 | 1回 |
- 初回接種
- 3~8週までの間に接種する。
- 追加接種
- 最終接種から7~13か月までの間に接種する。
(ただし、平成25年3月31日までに初回を接種した方は、7か月~18か月までに接種する。)
- 最終接種から7~13か月までの間に接種する。
- この接種間隔より短い間隔で接種した場合は、自費接種となり任意接種となります。
- この間隔より長い間隔で接種した場合は、公費接種ですが、和歌山県の場合、同意書記入の上、任意接種となります。
接種間隔には、十分注意しましょう。
ヒブワクチンの副反応は?
日本で今回使用が認められたヒブワクチンは、フランスのサノフィ・パスツール社の「アクトヒブ」で、アメリカを含む世界各国で使用されています。
他のワクチンと同じようにワクチン接種にはアレルギー反応や自己免疫反応などを引き起こす可能性があります。しかし、アクトヒブは深刻な副作用は非常に少ないとされています。
- 軽度の副反応として、接種部位が、赤くなったり、熱をもったりあるいは腫れることがあります(4人に1人以下)。また38.3℃以上の発熱がみられることがあります(20人に1人以下)。
- これらの副反応は、接種後24時間以内に発生し、通常そのままで2~3日後には改善します。
ヒブワクチンでその他知っておくことはありますか?
・培養工程で米国産ウシの血液及び心臓由来成分を使用している。
日本は、BSE(牛海綿状脳症)発生国原産のウシに由来する成分を医薬品の原料として使用しないことと決めていますが、このワクチンは現時点ではその取り決めに反した原料を使用しています。
しかし、欧州薬局法委員会からは医薬品製造に適している原料であることの証明書が発行されているそうで、本ワクチンによってTSE(伝達性海綿状脳症)が伝播する可能性は極めて低いと考えられています。ヒブワクチン接種によってTSEが伝播する理論上の危険性と、接種により得られる利点をご理解の上で接種していただきますようお願いいたします。
ヒブワクチンのコストパフォーマンスについて
このグラフのように、年齢が高くなるほど発生頻度は減っていきます。
コレを年齢別で全体の発症数の何パーセントを占めるか(0歳を100%として)を計算したものが右図です。
そして、ヒブワクチン接種回数と、この比率を1%低下させるために必要な接種回数を求め、コストパフォーマンスの良い順位を求めると下表のようになります。
総接種回数 | 1%低下させるための接種回数 | コストパフォーマンスの良い順 | |
---|---|---|---|
7ヶ月未満 | 4 | 0.04 | 2 |
7ヶ月~1歳未満 | 3 | 0.039 | 2 |
1歳代 | 1 | 0.017 | 1 |
2歳代 | 1 | 0.042 | 4 |
3歳代 | 1 | 0.068 | 5 |
4歳代 | 1 | 0.15 | 6 |
5歳代 | 1 | 0.34 | 7 |
このように、最もコストパフォーマンスに優れるのは1歳代での接種ということになります。
※ただし、総接種回数は外国の基準であり、日本の基準ではないという事や、コストパフォーマンスだけの問題ではなく、髄膜炎の怖さから考えれば早期接種が望ましく、そもそもこの予防接種は1歳未満で4回接種が常識であるということは前提として理解しておいてください。
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