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B型肝炎

B型肝炎

最近B型肝炎に関する見方がかなり変わってきました。

私が医学生の頃は....

  1. B型肝炎は4歳未満で感染すると、慢性化(B型肝炎ウイルスキャリア化 又は、HBVキャリア化)しやすく、肝癌の原因となる。
  2. 4歳を越えれば、一過性の肝炎症状の後、完治する。
  3. 感染経路は血液だけ。昔は、予防接種の注射針の使い回しだったり、輸血の検査が不十分だったから、感染が広まったが、今は使い捨てだし、輸血も検査してるし、だから、一般人はめったに感染しない。
  4. だから、キャリアーの母親から子供への母子感染さえワクチンで予防すれば、B型肝炎は国内から駆逐される。
  5. 慢性化しても、インターフェロン療法などで、セレコンバージョンすれば、治癒とみなされる。

と言われていましたので、B型肝炎ワクチンを接種するのは、医療関係者だけで良いという風潮でしたが、今ではガラリと認識が変わっています。

まずは、お急ぎの方のために結論だけ箇条書きします

  •  近年都会などで流行(ウイルス中の60%以上を占める)している遺伝子型Atypeは、4歳以降で感染しても、約20%の患者は慢性化し、肝癌の原因となる
  •  前述のとおり、4歳以降で感染しても慢性化の危険があるだけでなく、たとえ治癒しても、ウイルスDNAが肝細胞内に入り込み、将来、免疫抑制剤などを使用するような病気に罹患した際に、復活する可能性がある
  •  キャリアー患者の涙や、唾液、汗などに、感染成立できるほどの量のウイルスが排泄されており、保育園などで集団感染例が報告されている。また、感染源不明の小児B型肝炎が経験されている。
    ※おそらく昔から、予防接種の針の使い回しだけでなく、子供同士のじゃれあい程度で感染し、キャリアー化した人も沢山いるはず。この事は現在問題となっているB型肝炎訴訟の行く末にも影響を与えそうである。
  •  母子感染事業を施行後もB型肝炎患者は減っていない。感染経路として性交渉、保育所・幼稚園内での密着、家族内感染などが重要。
  •  慢性化しても、インターフェロン療法などで、セレコンバージョンしても、復活する。

つまり、一回感染してしまうと、一生体内に潜まれて、とても嫌なウイルスであるという事です。

B型肝炎について

頻度

 遺伝子型(Genotype)として、A型~J型まで特定されているそうで、古くから日本で見られていたタイプは主にGenotype B, Cばかりであったそうですが、最近都会でみられる急性肝炎の原因トップはB型肝炎で、その60%以上はGenotype Aで、成人急性B型肝炎の88%は性交渉が原因と考えられています。

 世界の人口60億人のなかで、3-4億人がB型肝炎ウイルス(HBV)キャリア。死亡者は120-200万人。日本の正確なデータはわからないが、推定で、130から150万人のHBVキャリア(人口の約1%→日本国民の100人に1人)がいるが実に90万人は自分の感染に気づいていないらしい。(CDCでは日本国民の2~7%がキャリアであろうと推定しています。)

 日本では、正確なHBVキャリア調査は行われていませんので、だいたい、40人規模の1クラス内に1人くらい(少なくとも2クラスに1人)はHBVキャリアがいるだろうということになります。

★殺菌しにくい(しぶとい)ウイルス?

 以前はなかなか死なないウイルスの定番とされていましたが、それほどでもない事が最近わかりました。とは言っても、エタノール消毒では、80%濃度で2分以上の接触が必要ですし、イソプロパノールでは70%で10分、煮沸では100度で2分以上必要です。また、アルコール消毒では、濃度が低くても、高すぎても、殺菌力が落ちるそうですので、規定の濃度が必要です。

 床屋の髭剃りなどで、ディスポーザル(使い捨て)でない剃刀を使用している所はまだまだ多いと思います。私が以前行っていた床屋もコップのアルコールにつけてるだけでした。そのアルコールは規定の濃度で必要以上接触させていたのか? だいたい、アルコールをコップに入れて置いておいたら、すぐに蒸発して濃度は低下します。大丈夫なのか? 怖い話です。

★感染経路

・垂直感染(母子感染)
以前から日本の感染経路の主な原因は、この経路であろうという事で、HBVキャリア母体から出生した新生児に無料で予防策を講じるHBV母子感染予防事業が行われ、95%までは予防出来ています。
・水平感染
圧倒的に性交渉(成人感染の88%)による感染が多く、その他、家族内感染、ピアスの穴あけや入れ墨などで器具を適切に消毒せず繰り返し使用した場合、注射器を共用し麻薬などを注射した場合などがあります。(あくまでこれは、特定可能な原因のみです。)その他、レスラー同士で感染した例や、日本国内報告では、相撲アメリカンフットボールなどでの集団感染事例もあり、汗も感染源となりうる。汗や、唾液、涙、尿からウイルスが排泄されており、保育園での集団感染例がある。保育園での噛みつき事故で感染しうる。(アメリカでは、保育園児の70%は噛みつかれた経験をもっている。)
また、近年、感染源不明の乳幼児感染が経験されてきています。

★感染した場合

 潜伏期は45~160日(平均120日)、発症しても、50%の人は無症状で気づかない。症状としては、不快感、食欲不振、悪心、嘔吐、右上腹部痛、発熱、頭痛、筋肉痛、発疹、黄疸は出る場合は、1~3週続く。疲労感などは、1か月ほど残る。

 急性肝炎後でも極めてわずかのHBVは肝臓などに潜伏し、リツキシマブなどの免疫抑制剤投与などで抗体濃度が低下すると、再活性化・重症肝炎(de novo 肝炎)を発症することがある。

 感染した人の1~2%は劇症肝炎を引き起こし、その63~93%は死亡する。
3歳未満では、すべての遺伝子型で、感染後キャリアー化しやすい。

CDCにおける年齢別のキャリアー化比率

年齢別B型肝炎キャリアー化比率(CDC)
  1. 遺伝子型Aに感染した場合、成人でも約20%が、慢性化し、キャリアーとなる。
  2. キャリアーの25%は、肝硬変や肝癌で死亡する。
  3. キャリアーの肝癌発生リスクは、一般人の12倍~300倍である。
  4. 日本での肝細胞癌による死者数は年間4000~5000人であり、子宮頚癌の年間3000人を上回る。

B型肝炎ワクチンについて

国産B型肝炎ワクチン(ビームゲン)

国産B型肝炎ワクチン(ビームゲン)
  • メーカー:化学及血清療法研究所
  • 遺伝子組み換え酵母菌に産生させたB型肝炎(Genotype C)の表面の蛋白質を、精製してワクチンにしたものです。抗原性に普遍性があり、1種類の抗原で8種類の遺伝子型をカバーする。もちろんGenotype Aもカバーできる事が確認されている
  • 世界初の(B型肝炎による肝臓の)癌予防ワクチンである。
  • 最も流通している国産ワクチンです。
  • 海外ワクチンとの互換性:不明(互換性はあるようですが、ちゃんと検証されてません。)



輸入認可B型肝炎ワクチン(ヘプタバックスII)

輸入認可B型肝炎ワクチン(ヘプタバックスII)
  • メーカー:MSD株式会社
  • 遺伝子組み換え酵母菌に産生させたB型肝炎(Genotype A)の表面の蛋白質を、精製してワクチンにしたものです。Genotype B, Cにも効果がある事が確かめられています。
  • ビームゲンで旨く抗体が付かなかった方、海外で追加接種する事が確定している方などに、使用しています。
  • アメリカでは、Recombibax HBという製剤名で販売されており、基礎接種後20年でも免疫効果が確認されています。
  • 海外ワクチンとの互換性:あり。(もともと海外製なので、海外で追加接種を受ける事が確実な方はコチラを推奨しています。)

  • 接種時年齢が幼いほど抗体の上昇が良い。
     接種時期は、身近にキャリアの方がいる場合は、月齢0、1、6がベストであるが、添付文書上、2か月からの接種となっています。ただ抗体価の着き具合は2ヶ月での接種が最も良いと言われていますが、海外では早期感染を恐れて、生直後からの接種開始を行っています。
  • 三角筋部分への筋肉注射が皮下注射よりも効果的に免疫を誘導できる。
  • 世界で定期接種として、全国民に接種している国は138か国(北朝鮮も!)で、日本のように任意でほったらかしにしているのは、16か国だけ。(またしても日本の厚労省と財務省、やってくれてます)
    B型肝炎ワクチンを定期接種として導入している国々
  • 2016/10/1からようやく日本でも定期接種として1歳未満の子供が公費で接種できるようになりました。

接種方法

2016/10/1から定期接種となります。
定期接種の対象者の条件は、

  1. 2016/4/1以降に出生した児
  2. B型肝炎ウイルス母子感染予防事業の対象者は除く
  3. 生後2ヶ月から初回接種可能
  4. 満1歳になる前日までに接種終了分まで公費負担
    です。
    接種スケジュールは以下の『B型肝炎の予防』方法に準じます。
  1. B型肝炎の予防(定期接種スケジュール)
    1. 初回:0.5mLずつを4週間隔で2回、
    2. 追加:1回目接種後20~24週を経過した後に1回0.5mLを皮下又は筋肉内に注射する。
      ※)ただし、10歳未満の者には、0.25mLずつを同様の投与間隔で皮下に注射する。

      ※)定期接種の場合、1歳の誕生日の前日から20週前までに初回接種を開始しないと、公費で3回接種を終了できません。
  2. B型肝炎ウイルス母子感染の予防(抗HBs人免疫グロブリンとの併用)
    1. 初回:0.25mLを1回、生直後に皮下に注射する。
    2. 追加:0.25mLを初回注射の1箇月後及び6箇月後の2回注射する。【出生体重2000g未満児は、さらに2か月後にも接種(保険未適応)する】(ただし、能動的HBs抗体が9~12か月後に獲得されていない場合には5回まで追加注射する。)
  3. 加速3回接種法
    1. 0日、7日、21日の計3回、0.5ml/回を皮下または、筋肉内に注射する。3回で接種し、1年後に4回目の接種を行う
      (出国まで1か月しかない旅行者や、医療関係者が入職後3か月以内に抗体をつけたい場合の接種方法で、1年間だけ有効な抗体を速攻で作ります。それ以降の抗体価持続を望む場合は、1年後に4回目の接種を行えば、通常接種方法と同等の抗体価が持続します。ただし、この方法は、添付文書に則らない接種方法となるため、2回目と3回目の接種においてだけは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に規定する救済制度の対象外となる可能性があり、輸入ワクチンのような輸入会社の補償もなく、健康被害が起きた場合、何の補償も受けられない可能性があります。完全な自己責任での接種となります
      ※初回接種は救済制度の対象となります。
      ※なお、裏ワザですが、他の国産ワクチンと同時接種として行った場合は、他のワクチンの救済制度を使う事で、結果的に2回目と3回目の接種を救済制度の対象にする事ができます。)

主な副反応

 発熱・発疹(0.1~5%)、局所の腫れ(0.1~5%)

抗体価はいつまで持続するか

 免疫獲得率は被接種者の年齢が高い場合や男性(男性>女性だとがわかっています)、喫煙者、肥満、慢性疾患の存在などの条件があれば低くなりますし、接種量の不足、不適切な接種スケジュール、不適切な接種部位(臀部への接種)の場合も免疫獲得率は低下します。


  • 通常の3回接種では、生直後や乳児期前半の接種の場合には99~100%、思春期では90~95%、成人以降は概ね90%前後の確率で免疫を獲得します。40歳以降では90%以下に、60歳以降では75%以下になります。
    •  ワクチンで産生された抗体は時間の経過とともに次第に減弱し、接種後8年以上経過すると約60%の人において検出されなくなります。ただし、細胞性免疫の記憶は20年持続すると言われており、今のところ、追加接種の必要性は言われていません。
  •  乳児期の接種は主に小学校入学までの密接な集団生活中の噛みつきなどからくる相互感染から守る目的で接種します。それ以降では、アメリカCDCでは、10代に、性感染症予防としてB型肝炎ワクチンをもう一回追加接種が必要かどうかについて現在議論中です。(今のところ、10代での追加接種は不要扱いですが、この決定は国産ビームゲンではなく、ヘプタバックスII(アメリカ名称:Recombivax HB)などを使用している場合での決定であるということは理解しておく必要はあります。)

  • ★急速3回接種法の場合、接種後1か月後での抗体獲得率は、皮下注射は31/38(82%)、筋肉注射では10/11(91%)程度です。抗体価の持続は1年程度ですので、抗体持続が必要な方は、必ず1年後に追加接種をお願いいたします。あと1回接種するだけで、長期に抗体が持続しますので、ぜひ、接種ください。

  • ★透析患者においては、CDCの勧告では、HBs抗体価が10mIU/mL未満になったとき、追加のワクチン接種をして抗体価を高めることになっています。

  • ★医療従事者において、一度、免疫が付いた方では8~10年後の抗体低下後に感染しても発病したりキャリア化することがないので再接種不要になっていますが、実際に発病やキャリア化を防ぐことができても抗体が低下すると感染そのものを防ぐことはできず、ウイルスが肝臓内に侵入する可能性が指摘されます。その場合には将来の免疫抑制剤使用時などにウイルスの再活性化(de novo肝炎)の可能性も否定しきれませんので、医療従事者の場合、抗体が低下するたびに数年ごとの接種を個人的にはお奨めいたします。この辺は医療受持者でも意見の分かれるところですが、やらないより、やった方が良いのは間違いないかと。
    (一般のリスクの低い非医療従事者でキャリアのご家族もおられない方の場合は、10年ごとの再接種は必ずしも必要ないと思いますが、リスクの高い方では抗体低下時には再接種が望ましいと思います)
     日本環境感染学会では、欧州やアメリカの基準同様、ワクチン接種後に抗体価が一旦上昇して、その後低下した医療従事者に対しての再接種は不要というスタンスです。これは、感染しても発症せず、業務上他人に感染させる心配が無いからであって、その個人の感染防御として十分であるという考えからではありませんので、その辺はご自分の体ですので、ちゃんと考えておく必要はあるかと思います。

抗体がつかない人への対応

  1. 初回3回が皮下注射だった場合には、次の3回は必ず効果の高い三角筋の筋肉注射で、もう一度初回から3回接種を2クールまでしなおす。
  2. 製剤を変更して接種しなおす。(ヘプタバックス-IIに変更する。)
  3. 皮内接種で数回行う。(0.1mlを5か所作成を規定回数接種)
  4. 接種量を規定量の2倍~4倍量で実施する。
    (※ただし、補償の適応外接種となります。透析患者さんなど免疫のつきにくい方に対して、海外では4倍量で実施しますので4倍量でも医学的には問題はないと考えられますが、自己責任での接種方法となります。)
  5. TLR4アゴニストアジュバント入りのFendrixを輸入して使用する
    (当院では扱っていません。腎不全患者専用ワクチンのため、ワクチン不応者の健常人に使用する場合は、純粋な自己責任使用となります。)
  6. TLR9アゴニストアジュバント入りのHEPLISAVは非常に強力で、第三層試験でも良好な抗体獲得率を示しており、今後の有望ワクチンです。
    (当院ではまだ扱っていません。)

リンク

  • 小児のB型肝炎ワクチン、定期接種化へ
    2016年度10月からの可能性が高いそうです。
    生後2か月から、1歳までに3回接種が対象の予定です。
    今の所、暫定救済措置はないそうで、1歳越えたら公費対象外とする予定みたいです。

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