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情緒の発達

情緒の発達
2003-11-01作成
2006-05-01Internet公開
2017-02-21 (火) 17:47:31更新

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情緒とは

情緒について、辞書で調べると

  1. ある事を思うにつれて生ずるさまざまな感情。思い。
  2. 感情の変動。
  3. 情趣、情調。

要は、その時々の感情のことを情緒と言います。

 人間はその時々に感情を持ちますが、それをそのまま表現、体現しまくったら、どうなるでしょう?人とまともな話し合いも出来ませんね。こうなるとビジネスなんてありえません。

 私たちは、感情を持ちつつ、それを抑え、相手と話し合い、意見を交換し、自分の考えを改め、人と協調し、生活する。これすなわち社会性です。

人は社会生活を主とする哺乳類です。

他の哺乳類にも社会生活を形成するものはありますが、人間はその中でもっとも社会性を営む哺乳類です。

よって、情緒を制御する必要があるわけです。

情緒制御システムの発達

生まれたての状態では、子供の情緒を制御するシステム(主に前頭前野や前部帯状回)は未熟なままです。

前頭前野による扁桃体の抑制

 大脳辺縁系(主に扁桃体)の発達発育と共に、自己の欲求、欲望、不安はうなぎのぼりで増えていきます(生後4ヶ月頃~)が、その欲望や不安を制御する前頭葉が未発達のままです。

 このシステムは親子の語りかけによって、児の前頭葉が教育されていくことで確立していきます。

 児が自分の(非言語)コミュニケーション能力を使って、親に不快の原因を訴えかけ、親が自分の(非言語)コミュニケーション能力を使って児の訴えかけをくみ取り、その不快を取り除きます。この連鎖の事を『愛着』と呼びます。

 親子共に(非言語)コミュニケーション能力が正常の場合は、この連鎖は通常うまくいきます。(父または、母が他の仕事や子育てに注意を削がれている場合は、除く)

 しかし、親子いずれか、または、両者ともに、(非言語)コミュニケーション能力に異常がある場合は、この連鎖はうまくいきません。その結果、児の情緒制御が不安定になります。

【ひとくちメモ】
 扁桃体への情報入力を阻害することで抗不安作用を示すセロトニンは、主に脳幹で作られますが、それらは、朝日を浴びる事や、リズミカルな運動、生物的なgroomingに相当するスキンシップで産生され、それを原料にして、睡眠ホルモンのメラトニンが作られます。つまり、情緒を左右するセロトニンの不足は、概日リズムの元であるメラトニン不足と同義という事になります。

 こういう事からも、情緒不安定と概日リズム障害は、合併しやすいと言えます。

母子・父子愛着形成

母子・父子愛着形成の図

  • 児→親:児の情動のコントロールを親に求める。(児側が持つその時々の発達年齢に応じたコミュニケーション能力を使って親に伝える)
  • 親→児:親がそれを察知して、的確に行動する。(親側が持つ子供へのコミュニケーション能力を使って、子供の欲望を察知し、適切な方向へ誘導してあげる)

愛着形成と愛着障害の例 (例え話)

簡単な例で愛着の過程を述べてみます。

親子ともに(非言語)コミュニケーション能力が正常の場合(愛着形成)

  1. 児の口の中に口内炎がある
  2. 親が食べ物を与えた時だけ、痛いので児が泣く
  3. 親がその様子を観察して子供が食べるときだけ痛がるので、口の中に原因があるのではないか?と疑い、口を見る。
  4. 口の中に口内炎を発見する
  5. 口に染みない飲み物を探す
  6. 児の口内炎の痛みが和らぐ
  7. 児の不快が取れて安心を得る
  8. 児は親の事を『私に安心をもたらす人』と認識する。
  9. 親が傍にいるだけで安心し、情緒が安定する。
  10. 親が傍にいれば、安心なので、知らない人にも笑顔で接する事が出来る。
  11. 親が傍にいなくても、視界の中に親がいれば、安心なので、初めての状況に対応できる。
  12. 親から離れていても、自分ひとりで不安に対応できるため、初めての状況にも適切に対応できる。新しい事に自分からチャレンジできる。

児の(非言語)コミュニケーション能力が異常の場合(愛着障害)

(例えば自閉症など)

  1. 児の口の中に口内炎がある
  2. 親が食べ物を与えた時の痛みを激しく感じすぎる
  3. その恐怖や恐れが取れず、口に物を入れていない時もひたすら泣き続ける
  4. 親がその様子を観察しても、いつでも泣いているので、何が原因なのかわからない。
  5. わからないから、普通の食べ物を与え続ける
  6. さらに痛みが加わり、児は余計に泣く
  7. 児の口内炎の痛みが和らがない
  8. 児の不快が取れず安心を得られない
  9. 児は親の事を『私を不快にする人』と認識する。
  10. 常に不快な状態となり、情緒が不安定になる。
  11. 親が傍にいるだけで、不快になる。何をやっても反抗してくる。
  12. 不安なので、知らない人に笑顔で接する事が出来なかったり、逆に不安に対する麻痺で誰にでもなれなれしくなる。
  13. 自分ひとりで不安に対応できないため、初めての状況にも適切に対応できない。新しい事に自分からチャレンジできない。

親の(非言語)コミュニケーション能力が異常の場合(愛着障害)

(例えば時間に追われて十分にかまってあげられない親、アスペルガー、など)

  1. 児の口の中に口内炎がある
  2. 親が食べ物を与えた時だけ、痛いので児が泣く
  3. 親がその様子を観察しても、何が原因なのかわからない。
  4. わからないから、普通の食べ物を与え続ける
  5. さらに痛みが加わり、児は余計に泣く
  6. 児の口内炎の痛みが和らがない
  7. 児の不快が取れず安心を得られない
  8. 児は親の事を『私を不快にする人』と認識する。
  9. 常に不快な状態となり、情緒が不安定になる。
  10. 親が傍にいるだけで、不快になる。何をやっても反抗してくる。
  11. 不安なので、知らない人に笑顔で接する事が出来なかったり、逆に不安に対する麻痺で誰にでもなれなれしくなる。
  12. 自分ひとりで不安に対応できないため、初めての状況にも適切に対応できない。新しい事に自分からチャレンジできない。
     
     このように、親子愛着形成は『情緒制御システム』の発達に不可欠なのです。
     今回は、簡単な例として、”口内炎”としましたが、実際は、『自分で〇〇したかったのに、親が急いでいるため、気づかず、〇〇をさせてもらえなかった』などの分かりにくい状況の積み重ねが多いです。

前頭葉と辺縁系の発達のイメージ

著者の考えるイメージをわかりやすくイラスト風にしてみました。

年齢辺縁系くん
(怒り、欲望、恐怖)
前頭葉先生
(辺縁系の興奮を抑える)
親の助け
0~3か月辺縁系君前頭葉先生基本は不要な事が多い
どちらもしょぼいのでおとなしい
4~12か月辺縁系君前頭葉先生最初は全面的に介入しつつ、
たまに我慢させる行動を繰
り返す。
急に辺縁系の機能が最初に強くなる。
1~2歳辺縁系君前頭葉先生
少し前頭葉が強くなってくる
2~4歳辺縁系君前頭葉先生かなり手間は不要となってくる。
かなり前頭葉先生が強くなるが、
まだ、入眠期と寝起きは弱い
4歳以降辺縁系君前頭葉先生ほぼ不要となってくる。
前頭葉先生が立派に発達する。
  1. 辺縁系君や前頭葉君の強さや発達速度には個人差がある。(個性)
  2. 辺縁系君や前頭葉君の強さや発達速度は環境に影響を受ける。(育て方)
    ※入眠期や、起床直後、レム睡眠期(浅い睡眠で、記憶回想期)は、前頭葉の機能が低下し、辺縁系有意となりやすく、夜泣きの原因となる。

愛着形成が重要

この親と子のコミュニケーションの連鎖(愛着形成)によって子供は、自分の情緒をコントロールする術を親から学び、自分でコントロールできるようになっていきます。(人間では4歳頃~)

これは、哺乳類全般に共通する情緒制御システムの発達過程だそうです。

子供側のコミュニケーション能力が低いために、親の適切な対応が得られない状態が続く結果発症するのが『自閉症』です。

一方、子供は正常にコミュニケーションを発しているのに、親が気づかず無視し続けることで起こる子供の状態を『愛着障害』といいます。

 自閉症児と愛着障害児は鑑別つけがたいほど、似通った行動パターンを示します。
どちらも同じ情緒制御システムの障害が生じるからです。

こういった理由から、一般的な育児書には、

より豊かに情緒を育てたいとなると、やはりママ・パパとのスキンシップに勝るものはありません。

例)赤ちゃんを抱っこする。
  赤ちゃんに話し掛ける。
  赤ちゃんに母乳・ミルクを与える。
  赤ちゃんとおもちゃで一緒にあそぶ。
  赤ちゃんと「こちょこちょ遊び」をして遊ぶ。
  赤ちゃんとお風呂に入る。

などなど、普通に育児をこなして行くことによって情緒が豊かに育っていきます。

また、スキンシップを取ることは赤ちゃんとママ・パパとの間に信頼間を育むことにも繋がります。

などと、書かれているわけです。

ただし!これは、赤ちゃんがそうして欲しいという反応を示したときに、してあげてこそ、意味があります
たとえば、『赤ちゃん』が、もっと、おもちゃで遊びたいと思っているときに、おもちゃを取り上げて抱っこしたりしていれば、親にとっては、スキンシップのつもりでも、子供にとっては、『イヤー』なわけです。こんなボタンの掛け違いがいっぱい起これば、やはり、子供の情緒制御の発達は遅れます。

つまり、子供の情緒制御に必要な親の能力は

 子供をもっとよく観察し、子供の発している要求を正確に理解し、その要求がその子供の発達年齢にとって問題ない程度なら許容し、問題あるなら、理由を理解させ、我慢させつつも、抱擁やスキンシップによって感情を沈静させる事です。

※社会性(コミュニケーション能力)の発達年齢に合わせるのがポイントです。たとえ、4歳児でもコミュニケーション能力が2歳相当なら、2歳相当に合わせてあげる必要があります。

まとめ

子供の情緒制御能力を発達させるためには・・・

子供をもっとよく観察し、理解すること

に尽きます。

では、観察する具体的方法はどういったものがあるのでしょうか?

子供の問題行動の解決策を見つける

解決方法を見つける方法として2種類があります。

応用行動分析

 問題が軽微であれば、まず児の問題点をリストアップし、その問題行動が起こる前後に共通する事象がないかについて徹底的に調べます。
その共通点が見つけられれば、それが、原因ですから、そこを取り除いてみる。
これは、児の問題点に焦点を当てる方法です。
これをABC分析と言います。

解決志向性アプローチ(solution focused approach)

 次に、問題点が多すぎる、または、原因はいくつも分かっているが、全ての問題点をなくすことが困難な場合、
児の起こす問題行動以外をひたすら観察し、いつもなら問題行動を起こす状況なのに、なぜか問題行動を起こさなかった時をメモし、何が違うのかについて考察し、そこに改善点を見つけ、実行してみる。
これは、児の良いところに焦点を当てる方法です。

※問題とされる過剰行動が自傷他害の恐れが酷ければ、そして、精神的疾患、または、器質的疾患によると判断される場合は薬(メジャートランキライザーetc)の必要性が出てくる場合もあります

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